達成
シオリとヒナと別れたあと、ユースケはヘルパーを呼び出した。
【名前】ユースケ
【職業】ノービス
【レベル】8
【HP】34
【MP】17+1
【STR】12+2
【VIT】12
【AGI】12+1
【DEX】12+1
【INT】12
【LUK】12
【片手剣 Lv3】
【盾 Lv1】
「盾もそろそろ上がるかな」
昨日までは、回避を主体に戦っていた。
ホーンラビットの突進を避け、隙を見て攻撃する。
それが一番安全だったからだ。
だが、今日は意識して盾を使ってみるつもりだった。
片手剣と盾。
この組み合わせを使いこなせれば、戦い方の幅も広がる。
その前に、1つ確認しておく。
(パーティー機能)
【転職後に利用可能です】
「やっぱり、まだ使えないか」
シオリとヒナとは一緒に行動したが、正式なパーティーを組んだわけではない。
もう1つ尋ねてみる。
(パーティーを組んでいない場合の経験値分配は?)
【システム外パーティー】
【経験値は戦闘への貢献度に応じて分配されます】
【ドロップ権は戦闘への貢献度に応じて判定されます】
「なるほど」
正式なパーティーでなくても、協力して戦うことはできる。
ただし、経験値やドロップは均等ではなく、戦闘への貢献度で決まるらしい。
「貢献度の判定は、また今度かな」
攻撃だけなのか。
防御や回復まで含まれるのか。
気にはなるが、今すぐ必要な情報ではない。
「まずはレベル10を目指そう」
転職すれば、正式なパーティー機能も使えるようになる。
その時に改めて確認すればいい。
ユースケは表示を閉じ、草原の奥へ歩き出した。
◇
しばらく進むと、草むらが揺れた。
「来たね」
白い影が飛び出す。
ホーンラビット。
昨日、何度も戦った相手だ。
ユースケは片手剣を構え、木盾を前へ出した。
「今日は盾を試してみよう」
ホーンラビットが地面を蹴る。
一直線に突進してきた。
ユースケは避けない。
そのまま正面から迎え撃つ。
ガンッ!
角が木盾へ激突した。
重い衝撃が腕へ伝わる。
「くっ…」
予想以上に重い。
だが、受け止められないほどではない。
次の突進。
今度は盾を少し斜めに構える。
ガンッ!
衝撃を受けた瞬間、身体を横へずらした。
ホーンラビットの勢いが、そのまま横へ流れる。
「こっちの方がいいね」
完全に止めるより、受け流した方が次の攻撃へ繋げやすい。
すぐに片手剣を振るう。
1撃。
ホーンラビットが体勢を立て直す。
再び突進。
盾で受け流し、もう1撃。
さらに追撃すると、ホーンラビットは光の粒となって消えた。
「よし」
次の獲物を探す。
突進。
盾で受ける。
攻撃。
また盾。
何度か繰り返すうちに、盾を使った戦い方が少しずつ身体に馴染んできた。
そして、何体目かのホーンラビットを倒した時だった。
【VITが1上昇しました】
「フフッ」
ユースケは表示を見つめた。
「やっぱり、防御を続けるとVITが伸びるみたいだね」
予想していた通りだった。
これでまた1つ、行動成長の仕組みが見えてきた。
「このまま盾も試してみよう」
片手剣を握り直し、次のホーンラビットへ向かった。
◇
さらに戦闘を続ける。
そして――。
【盾熟練度がLv2になりました】
【シールドバッシュを習得しました】
「ピコーンきた!」
思わず笑みがこぼれる。
武器熟練度が上がり、新しいスキルを覚える。
この瞬間は何度経験しても嬉しい。
すぐに詳細を確認した。
【シールドバッシュ】消費MP:2盾で相手を強く打ち付け、吹き飛ばす。
「吹き飛ばしか」
スラッシュとは役割が違う。
相手の体勢を崩したり、距離を作ったりするための技だろう。
「試してみよう」
近くにいたホーンラビットへ向かう。
突進してくるのを待ち、木盾を構えた。
「シールドバッシュ!」
盾が淡く光る。
身体が自然に踏み込み、そのまま盾を叩きつけた。
ドンッ!
「おおっ!」
ホーンラビットが大きく吹き飛ぶ。
地面を転がり、体勢を崩した。
ユースケはすぐに距離を詰める。
「スラッシュ!」
淡く光った片手剣が、ホーンラビットを捉えた。
そのまま光の粒となって消える。
「威力はそこまで高くなさそうだけど…」
木盾へ視線を落とす。
「隙を作るには十分だね」
シールドバッシュで体勢を崩し、片手剣で追撃する。
単純だが使いやすい。
相手との距離を取りたい時にも役立ちそうだ。
「盾も育てる価値はありそうだね」
回避だけに頼る必要はない。
受ける。
流す。
吹き飛ばす。
そして攻撃する。
少しずつ戦闘の選択肢が増えてきた。
◇
その後も狩りを続けた。
盾で受ける。
避ける。
片手剣で仕留める。
時にはシールドバッシュで距離を作る。
同じホーンラビットを相手にしていても、昨日とは戦い方が違っていた。
昼を過ぎた頃。
【レベルが9に上昇しました】
「よし!」
ユースケはステータスを開く。
【名前】ユースケ
【職業】ノービス
【レベル】9
【HP】36
【MP】18+1
【STR】13+2
【VIT】13+1
【AGI】13+1
【DEX】13+1
【INT】13
【LUK】13
「あと1レベル」
転職まで、あと少し。
ここまで来ると自然と気持ちも弾む。
「今日中にいけそうだね」
ユースケは表示を閉じ、再び片手剣と盾を構えた。
◇
午後も狩りを続けた。
ホーンラビット相手に苦戦することは、もうほとんどない。
突進を避ける。
盾で受け流す。
シールドバッシュから追撃する。
状況に応じて使い分けながら、1匹ずつ確実に倒していく。
そして夕方。
また1匹のホーンラビットが光の粒となって消えた。
その直後だった。
【レベルが10に上昇しました】
「よっしゃ!」
思わず拳を握る。
続けて通知が表示された。
【ノービスのレベル上限に到達しました】
【転職可能になりました】
【これ以上、経験値は獲得できません】
「ついに来たね」
ユースケはしばらく表示を見つめた。
この世界へ来て、まだ3日。
それでも、最初の目標だったレベル10へ到達した。
「本当にここで止まるんだね」
経験値はもう入らない。
だが、行動成長や武器熟練度まで止まるわけではない。
それでも――。
「今日はここまで」
片手剣を鞘へ納める。
今の最優先は、狩りを続けることではない。
「まずは転職だね」
戦士。
格闘家。
盗賊。
僧侶。
狩人。
魔術師。
選べる職業は6つ。
どれを選ぶかで、この先の戦い方も変わってくるはずだ。
「どれにするかな…」
自分に合う職業は何か。
どんな武器を使いたいのか。
これから、どんな戦い方をしたいのか。
考えながら、ユースケは夕暮れの草原を歩き出した。
ノービスとしての最初の目標は達成した。
次は――初めての転職だ。




