第9話 お勉強は大事ってこと
「魔力の込められた絆創膏?あの人まさか、魔法少女……?!」
「十中八九そうだろうね。微量すぎて気づけなかった……完全にミスだ。」
今の段階じゃ素性がまるで分からない。
すぐにでも正体を突き止めたいけど、疲労で戦えたものじゃない。
万が一敵対したとして、返り討ちになるだけだ。
今できることは魔力での絆創膏の破壊。
だけど……
「あんな親切そうな人なのに、味方じゃないってことあるかな……」
怪我した右手を眺めながら呟いた。やっぱりもう治りかけている。
まるで、「早く治りますように」と心配してくれているみたいだ。
「万が一だよ。もし本当にただの親切なら、今度会った時にお礼しよ?」
まあ、それが正論だよね。
「ごめん……!」
小さく呟き魔力を流した。
絆創膏は音もなくほろほろと崩れて、溶けていった。
「ひとまず、今日はお疲れ様!それにしてもあの場でサンドブラストを思いつくなんてすごいね。」
「ヌイもお疲れ様。えっと……サンドブラスト?なにそれ?」
「えっ、知らないでやってたの……?」
ヌイによると、サンドブラストとは砂やガラスなどを高速で吹き付けて、金属や石などを加工する技術のことらしい。
「一言で言えば、砂でする彫刻ってとこかな。環境を利用した戦闘!やっぱりフウカはセンスあるね。」
「あ、ありがとう?」
一人でテンションが上がっているぬいぐるみをよそに、私は通学カバンから教科書を引っ張り出す。
はあ……これで土日の半分が終わってしまった。
明日は勉強しないとそろそろヤバい。
急激に現実に引き戻されていく。
思えばあの日、補習がなければ死ぬこともなく、ヌイとも出会っていなかった。
あの時の気分は最悪だったけど、今は少しだけ自分の頭の不出来に感謝している。
「勉強めんどくさ〜〜〜い!!」
愚痴りながら大量の参考書をドカドカと机に積んでいく。
物理に生物に数学。やりたくないものばかりだ。
「フウカ理数系苦手なの?」
「うん。この前は物理の補習で帰りが遅れた。で、死んだってワケ。」
ヌイはポカーンとしている。次に何を言ったらいいか分からない顔だ。また困らせちゃったかな。
「風魔法ってさ、つまりは空気の流れを操る魔法であって……えっと」
「うわぁ……じゃあ、理科の勉強が大事、と。」
「そういうこと。」
ヌイはあっさり言う。
「知らないと死ぬかもね〜。」
ヌイが喋り出した時点で察しはついていたが、やはりこうなってしまった。
死ぬとか簡単に言ってくれるなあ。
でも生死がかかってる以上、やるしかない。
それに、強くなるって決めたでしょ?
──よし。
私は机に向かった足を速攻でUターンさせて、お風呂に直行した。
「あっ逃げたな!!」
「寝る前!寝る前にやるから!!」
そうして早めにシャワーを浴びて、
……そのまま寝た。
寝落ちする寸前、耳元で「お疲れ様」と聞こえた気がした。
次に目が覚めたのは日曜日の午後1時。
終わった……。
魔力過負荷で頭がキーンと痛む。絶対に無意識で魔法使わないようにしないと。
仕方なく勉強することにして、ヌイに付き合ってもらいながらテキストを進める。
話した感じそこそこ頭が良いっぽくて、なんか負けた気分。
翌朝は気分よく起床!そしていつも通り登校!……するつもりだったのに、まだ頭が痛い。
やばくなったら保健室で休もう……。
学校帰りに影に出くわしたら怖いなと思って、ヌイをサブバッグに押し込める。
「フウカまって狭い狭い狭い狭い……」
「まだ一人じゃ不安だよ……着いてきて?」
渋々承諾してくれた。不満そうな顔がみちっと詰まっている。かわいい。
普段より手荷物は増えたけど、これで安心。
無事に教室についた。
そして1限目、早速頭が痛くなる。
数学の授業だ。
逃げるように保健室に向かう。
「すみません、頭痛くて……休ませてください。」
「学年と組、名前は?」
「1年6組、四季フウカです。」
自分でも嘘みたいな苗字だと思う。10人くらいしかいないらしい。
「もう少しでベッドが空きますよ。座って待てそうですか?」
「はい……。」
椅子に視線を移した瞬間、固まった。
見たことある人。
あの時、絆創膏をくれた人がいる。




