第8話 そのための
「どっちも、本物……」
ヌイは困惑しつつ、その意味を咀嚼するように呟く。
私は待っている間、知っている情報でその方法を考えた。
存在の裏側……。
一つになろうとするなら影は自然現象か?
存在を否定されたから、こうして世界の裏側まで来てしまったのかもしれない。
そんな中、ヌイはやっと口を開く。
「そういう矛盾を平気で言えちゃうところ、好きだよ。」
ぼろぼろなのに、笑顔だけは一段と輝いて見えた。
溜めに溜めた言葉をやっと出せたみたいに、ヌイの顔は解放感と安堵に満ちていく。
「む、矛盾ってなに!私は本気でいってるんだからね!」
「ごめんごめん、でも実際そうで……昼と夜を同時に存在させる、みたいなことなんだ。」
ムスっとした私をなだめるように、ヌイは続ける。
「でも、いいと思う。その世界のほうが綺麗だ。」
心拍数が一気に上がった。
私の言っていることはメチャクチャだ。
でも、それを実現したい。
どんなにあり得なくてもそうしたい。
この気持ちは、矛盾なんて言葉で片付けさせない。
2つの世界を肯定するんでしょ?
なら……まずは、自分から。
「私やるよ──全部の存在が否定されない世界にしたい!」
優しい風が頬を撫でる。
自分のじゃない、本当の風。
静かに、しかし強く背中を押してくれている気がした。
「……ついていくよ。きっとそのために、魔法少女がいるんだと思う。」
ヌイなりに、覚悟を決めたような一言だった。
二人で大きすぎる理想を語った直後、周囲の空間が歪み出す。
次に目を開けた時には、私は歩道のアスファルトに両手をついて転んでいた。
膝や肘に擦り傷ができて痛む。特に右手の怪我は酷くて、その周りだけ地面が赤黒く変色していた。
「だっ、大丈夫ですか?!派手に転んだみたいですけど……うわ、血出てますよ!」
近くにいた人が心配してくれた。
さっきまでの戦闘の傷は、派手に転ぶという形で現実になったみたいだ。
「大丈夫です、ありがとうございます。」
「そうですか……。あ、あとこのぬいぐるみ、落としましたよ。」
ちょっと汚れたヌイを渡された。
やっぱり無傷ってわけにはいかないみたいだ。
その後、その人は私に大きな絆創膏をくれた。
傷は痛むけど、当初の予定、ショッピングモールでの買い物を忘れているわけではない。
あれもこれもとカゴに入れていくと、レジで全然可愛くない値段が表示された。
でも、ヌイも私もこんなに頑張ったんだもん。これくらいの贅沢はしなくちゃね。
ヌイにはフリル付きのポンチョにメイド服、麦わら帽子にハートのサングラスまで買ってしまった。
どれも妙に似合っている。
「それにしても絆創膏くれた人、親切な上に綺麗だったね。羨まし〜……」
右手を見ながらそう呟いた。
よく見るとあまり血は滲んでいないし、治りかけている。
「あれ、なんか治るの早くない?」
その違和感に気づいた瞬間、
「フウカ気をつけて。」
ヌイの表情が一瞬で変わる。
「その絆創膏──
魔力が込められてる。」




