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第5話 強くなりたい!

 次の日の朝は、あまりいい目覚めとは言えなかった。なんだか気分がどんよりして、体が重い。


それに全身が筋肉痛のように、動かすとピーンと痛む。特に頭痛が酷い。


 「おはよう。あれ、顔色悪いね」


 「ヌイおはよう……なんか全体的に体調が悪いみたいで……」


 昨日の出来事を思い返してみると、全身を使ってぶん殴るとか、車に撥ねられた痛みとか、心当たりしかなかった。


 「それ多分、魔法使いすぎたんじゃないかな。」


 「なにそれ……それも聞いてない……」


 ヌイはこういうところがある。事前に言わないから私が毎回初見殺しを喰らうことになる。

若干慣れてきた。


 「魔力と筋力は似てるって話したでしょ?それは“魔力過負荷”って言って、魔法の筋肉痛みたいなもんだよ。」


 「魔法の筋肉痛……」


 二つは一番かけ離れた単語だと思っていたので、その語彙が新鮮すぎて少し笑えてきた。


ヌイは私の不調なんて気にせず、呑気に欠伸をしている。

私は昨日の話を反芻しながら眠い目を擦っていた。

それから少し考えて気づく。


 「筋肉痛の後って、筋力が大きくなるよね?じゃあ魔力も……?」


 「うん、大きくなる。才能も関係してるけどね。」


 やった。これなら強くなれる。チハヤを救えるかもしれない!よくある先天的なものが全てではなくて安心した。そう思うと急に目が覚める。


 「ヌイ、私強くなりたい!チハヤを助けられるくらい!」


 「いい目標だね。でも、世界救うくらいの意気じゃないと。それくらいの覚悟が必要だよ。」


 「わかった。じゃあ私──」



 「世界の一つや二つ救えるくらい、強くなってみせる!」



 そう言った瞬間、足元から風が立ち込めてきた。思わず魔法が出てしまって、また頭が痛む。

そうか、イメージするから頭が痛むのか。でもこれも強くなるための一歩!だけど……


 「痛い……」


 「あはは。そのうち慣れるよ。ボクも付き合うからさ。」


 そういえばヌイは私が無理やり連れて来たみたいなものだし、今日にでも帰っちゃうと思ってた。でも今付き合うって……


 「ボクこれからフウカと一緒にいるつもりだよ。フウカさえ良ければ、だけど……」


 「もちろん。むしろ私からもお願い。強くなりたいし、なによりもっと知りたいんだ。魔法のことも、影まもののことも、ヌイのことも。」


 「契約成立だね。これからよろしく!」


 「うん、よろしく!」


 それからは、昨日のお風呂でできた魔法の操作について話したり、ヌイの魔法について聞いたりした。


今でこそ空間を縫い付けて固定とか、いかにも魔法らしいことをしてるけど、昔は布を縫い合わせるだけの魔法だったらしい。


 「ヌイは生まれつき魔法が使えたの?」


 素朴な疑問。私は後から使えるようになったからだ。そもそもなんで私が使えるようになったのかもわからない。


 「生まれつきじゃないよ。お裁縫がもっと楽だったらいいのに、魔法が使えたらちょちょいなのにって思ってたら使えるようになってたんだ。」


 「ボクも後から知ったんだけど、魔法を使うには、魔法を強く知覚することが条件らしい。ボク、自分が思ってたよりずっとメルヘンな頭してたみたい。」


 なら私もだいぶ愉快な脳みそをしていることになる。確かに憧れてはいたけど……。

すると、ヌイは窓の外を見て言った。


 「今日はちょうどいい風が吹いてるね。風魔法に慣れるためにも、自然の風に触れておこう。」


 「お出かけかぁ。あ!じゃあ折角なら、どデカいショッピングモールにいこう!」


 ちょうど服も欲しかったし、いいことを思いついた。ヌイにペット用の服でも買ってあげよう。


ウキウキで準備を終えた後、私はヌイを抱えて外に出る。まだ少し恥ずかしい。


 そのショッピングモールは既に大きいのにまだ増築するようで、一角が工事の為覆われていた。平らにするために岩々が削られている。


私たちがそこを通りがかったその時、工事にしてはかなり不自然な轟音が響いた。ヌイの表情に緊張が走る。


 「フウカ、止まって」


 次の瞬間、バリケードを突き破って岩のような腕が姿を現す。その大きさから、本体は10メートルを超えていると思われる。


今にも道路側に這い出ようとするそれはどう見ても……


 「(まもの)だ。」

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