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第4話 久しぶりとただいま

「だってお母さん、死んじゃったもん。」


 「え……」


 その返事を聞いて、ヌイはかなり顔色が悪くなった。単に気まずいだけ、と言うわけでもなさそうで、明らかに目が泳いでいる。


「身内が死ぬって、ボクは辛かったから……。思い出させちゃったかと思って。」


 それも咄嗟の嘘に見えたが、私を心配しているのも事実なようで、言いながら申し訳なさそうに縮こまる。


 「気にしないで!結構前だし、こういう受け答え慣れてるから!」


 ヌイは弱々しく返事をする。話題が話題なのでこれ以上深掘りすることもせず、私たちは部屋に上がった。

鼻歌も尻尾の揺れも一切ない、静かな雰囲気が私たちの間に流れていた。


 「はい、私の部屋。動いていいよ……痛っ」


 ヌイのせいで足下がよく見えない。何か踏んだかな。お菓子のカスとか?日常茶飯事なので、一旦ヌイを脱ぎ散らかしたパジャマの上におろしてから確認しようとした。


「汚っ!!」


 ヌイが断末魔みたいな声をあげる。振り返った顔は目をきゅっと瞑っていて、口は半開きになっていた。


フレーメン反応みたいな顔だ。猫とかがたまにやる変な顔。こうして見るとやっぱり猫に似ている。


 「え、汚いよフウカ。聞いてる……?」


 「わかってるんだけど、慣れちゃって。えへへ……」


 そう言いながら制服のブレザーを脱ぎ捨てると、ヌイは引きながらも魔法を使ってハンガーにかけてくれた。


 「手伝うからさ、ね?」


 そのまなざしを無碍にすることは、私にはできなかった。ちょっとかわいそうですらあったから。


手始めに踏んでいたお菓子の包装紙をゴミ箱に投げ入れる。


うん。やはり……


 「めんどくさい」


 「分かった、じゃあ魔法使って楽しよう!ね!」


 そうだ、今の私には魔法これがある。それなら楽できるかも!


まずは散らばった洋服を一カ所に集めるべく、それっぽいポーズをとって少し力みながら、服が思い通りに飛んでいくイメージをした。


しかし何も起こらない。


 「わかった。フウカって感覚派でしょ。」


 「わ、何いきなり。そうだけど。」


 「さっきも反射で魔法使ってたし。熱いものを触った時に手を引っ込めるでしょ?そんな感じ。」


 ヌイが言うには、魔法は感覚の延長線みたいなものらしい。


例えば、ピアノを弾くとする。普通なら指を動かすけど、魔法なら直接ピアノを動かせる、みたいな。


普通の人の筋力にあたる要素が、私たち魔法少女にとっての魔力になるそう。


 「だから特別なことは考えなくていい。片付ける為に腕を動かす。それと同じ意識で魔法を使ってごらん」


 (ごく自然に。服を掴んで角に投げるのと同じ。)


 (拾って、ぽい。)


 「で、できた」


 「うまい!それだよ、その感覚!」


 手足を動かすように魔法を使う。思ったよりも簡単だった。その調子で次々投げていき、やっとベッドまでの道ができた。


 「道ができたのは良いけど、あとでちゃんと洗濯しようね。あとゴミも。」


 私は一応返事だけして、お風呂に直行した。

シャワーから出る水の軌道を曲げたり、湯船に風を吹かせて波を作ったり、久しぶりにわくわくするお風呂に入れたと思う。

私はうきうきで部屋に戻る。


 「慣れてきたかも!さっきもお風呂でいろんなこと試してきたよ!……って寝相悪っ」


 ヌイがいなくなったと思ったら、私の布団に顔を突っ込んで寝ていた。


 「ハッ!……」


 ガバッと飛び起きてこっちを見る。あくびのせいだろうか、少し目が潤んでいた。人形も涙出るんだ。


 「あ、おかえり。ちょっと眠くなっちゃった。」


 鼻を啜っているみたいで、どうも泣いているように見えた。


 「泣いてた……?」


 「これは……花粉症かな」

 

 だとしたら花粉まみれのまま布団に……!

間髪入れずそのままヌイを鷲掴みにした。


 「だめ!お風呂場行く!丸洗いする!」


 「うわぁ!!!」


 「大丈夫、風魔法で乾かしてあげるからすぐ終わるよ。さっき練習したんだから。」


 「ああぁ……」


 2人で綺麗になったあとは、布団で良く眠れた。

ヌイからは洗いたてのいい匂いがする。

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