第23話 ほんとに、優しいんだから。
「……は?」
「あの子は…鎬地メイ。昔の知り合い。」
「で、私のお母さんは?」
いい加減覚悟決めてよ。
思い返せば、ヌイと知り合った時から変な感じはずっとあった。
いつか言わなきゃいけないって、分かってたでしょ?
「キミのお母さん……ミツキはね、月の魔法少女だった。」
「ボクなんかを助けてくれた。優しいんだ。……でも戦闘になると、口悪くてね。重力を操って、隕石みたいなのを落として。もうめちゃくちゃだったよ。」
私たちは、黙ってそれを聞くことしかできなかった。時計の針の音が、やけに大きい。
「ボクたちも昔、世界をどうにかしようって、今のフウカたちみたいに戦ってたんだよ。」
「ねえ、分かんない……。分かんないよ!!」
「16年前、地図が変わるほどの、大きな災害が起こるはずだった。それと戦って──」
「分かんないって言ってんじゃん!」
「フウカちゃん、おちっ、落ち着こう……?」
そうだよ。
アオイが一番疲れてるはずなのに、この子に無理させちゃダメだ……。
「……続けて。」
「ボクたちは、勝てなかった。」
まあ、薄々分かってたよ。勝ってたらそんな顔しない。
脱力した私の肩を、アオイが支えてくれている。
「でも、負けた訳じゃない。そんな大災害は起こさせなかった。けどボクたちも、それなりの傷を負った。」
「その時、お母さんは……?」
「メイを庇って、きっとその時の怪我が原因で……。」
ヌイのそんな声、初めて聞いた。
きっとヌイが人間なら、涙で水溜りを作っていたと思う。
「その時ボクは、フウカを助けるみたいにできなかった。ボクの治療が不完全なせいだ……!ボクのせいでミツキがっ……!」
「……分かった。いや分かんないけどさ。ヌイのせいじゃないよ。きっとそうだ。」
「でも──!」
その瞬間、私たち2人をアオイが優しく抱きしめる。
「誰も悪くないよ。2人とも辛かったんだよね。」
手のひらの体温が、背中に満ちていく。
アオイはあったかいね。優しいね。
泣いていいんだよって、言ってくれたんだよね。
部屋にはしばらく、ヌイと私の嗚咽だけが響いていた。途中からアオイも泣いていた。
「なんで……アオイが泣いてんの。」
「何でだろう、分かんないや。」
落ち着くまで、頭を撫でられていた。
私も仕返しに撫でてやった。
そしたらもっと強く撫でてくるもんで、なんだか笑けてきた。
するとアオイは、何か思い出したように話し始める。
「ねぇヌイちゃん。16年前の災害って、あの……?」
「……うん。連続起きた大災害に感染症……教科書に載ってる、アレ。」
「倒し損ねた影の断片が、チハヤを殺そうとしてる。」
また声のトーンが落ちた。
と思ったら、吹っ切れたようにいつものヌイに戻る。きっとそうしたかったんだと思う。
「……この話は、今はおしまい。チハヤを助ける事を優先しよう。」
ヌイはテーブルの上に乗って、私たち2人に向かって言う。
「ボクはあの影の能力を知っている。一回戦ったから。」
「あいつの能力は──」




