第24話 どうしたいんだろうな
──生成と消失。
それがあいつの能力だ。
私の武器ごときじゃ、どうしようもない。
鎬地メイは、病院の屋上に向けて薄暗い階段を登っていく。
「来たなァ負ケ犬……で、どうなんだよ?アのガキ共は。」
「風は頭が切れるな。でもそれだけだ。もう1人は魔力が少し多いだけの、一般人だ。」
不気味に笑いやがる。
この病院で何人殺してきたんだこいつは。
何人もの人間が、乱雑に押し固められたみたいな身体をしている。
胸糞悪いな。
「嘘じャねえだろうなァ……嘘ついたラ殺すぞ……ヒヒッ。」
「嘘じゃない。つく意味も無いだろ──」
次の瞬間、私の左脚が消えていた。
預けていた体重が放り出され、派手に転ぶ。
これが消失……。
「……何すんだよ。」
「アハッ!冗談だろ。ノリ悪りィなア……。」
気がつくと、左足が戻っていた。
形状の破綻した手を何対も叩いて、私を嘲笑う。
「もう行ケ。邪魔ァすンなよ。楽シみで仕方ねェよ!」
勝てない相手に屈するのは悪い事じゃない。
変えられない運命に抗ったって、傷つくだけだ。
私を庇ってなきゃ、ミツキは助かってた。
私が前に出なければ。
私がもっと、強ければ。
子供が産まれたって、いっぱい自慢してたじゃないか。生きているべき人だったのに……!
もう、抗って傷ついて、失いたくない。
これは放棄じゃない、選択だ。
……多分あの子らは、こいつと戦う。
しばらくは持つが、負けるだろうな。それは私が加勢しても変わらない。
あの人の子供まで、死なせたくない。
私にできるのは、あいつに誤情報を流すことくらいだ。
フウカは強いし、頭がいい。
隣の奴は魔力が多いどころじゃない。桁違いだ。
矛盾している。
戦って欲しくないのか、倒して欲しいのか。
私は何がしたいんだろうな。
薄暗い階段の踊り場でうずくまる。
どこにも行けない。
行きたくない……。
──────
「「生成と消失?」」
私とアオイは、2人揃ってヌイに同じ質問をぶつける。
「相手の体の一部を消す。ただ、脳とか心臓みたいな、急所は消せないみたいなんだ。」
「む、無理ゲーじゃん……。」
「でも……それだけの能力、代償無しで使えるの?」
「そこなんだよね。それが分かれば勝てるかもしれない。」
3人で頭を悩ませる。
今日のことを振り返り、あいつの脳力を考えているうちに、あの人──鎬地メイの言葉を思い出した。
「あのメイって人、なんか変じゃなかった?」
「それは……どういうこと?」
影の味方をするわけでも、私たちと敵対するわけでもなく居なくなった。
それに、去り際のあれ……。
「『せいぜい死ぬなよ』って、まるで私たちを応援してるみたいじゃん。」
「たしかに……!ヌイちゃんはどう思う?」
ヌイは、うーんと考え込んだあと、自信のなさそうな顔で話す。
「メイの語った思想は、多分本心だ。でもボクたちを応援してるのも、本心。」
「矛盾してない?」
「そりゃ、若い頃にあんな経験をしたんだ。葛藤が生まれるのも、虚無になるのも不自然じゃない。」
何があったかは分からない。
でも、ヌイの取り乱し方と、メイって人の窶れ方を見るに、相当なことがあったんだと思う。
詳しくは聞けなかった。
「……で、どうすんの。敵か味方かも分かんないよ。」
「敵ってことはないと思う。そんな子じゃない。」
「とにかく今は、チハヤくんの事でしょ。あの様子だと、次会ったら戦うことになるんじゃない?」
そこに、スマホの着信音が割って入ってた。
……着信は病院から。
いい知らせじゃないことは、明らかだった。




