第20話 看取られるなら
そして迎えた土日、私たちは3人で大学病院に向かった。
「見た目通り広いね〜。」
「フードコートとかあるらしいよ。」
「なにそれ、あとで行ってみようよ。」
私も魔法少女になってからはここに来ていない。久しぶりに来たけど、やっぱり広い。
ここなら風魔法が使えそうだ。
……思考が魔法少女っぽくなってきた。
受付に行くと、少々お待ちください、とのことだったので、お手洗いを済ませることにした。
久しぶりに会うから、いつもより長く鏡の前で服装を確認する。
2人のところに戻ろうとしたその時、廊下でお爺さんの患者が転んだ。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だとも。悪いね、お嬢さん。」
人の良さそうなお爺さん。
足を引きずっている。
いやあれは……影だ。人の形の影が、片足にすがりついている。
「足……悪いんですか?」
私はお爺さんの足ではなく、影の方を指さしていた。
「ああ、脳の病気でね。体が動かなくなっていくんだよ。」
「……まさか君、こいつが見えているのかい?」
「えっ……そ、それはどういう?」
「この病気は生まれつきなんだ。そしてこいつは、物心ついた時からわたしのそばにいた。」
「イたァ。」
影が、喋った。
体が動かない……。驚いて咄嗟に魔法を使うことができなかった。
「分かるよ。こいつは、わたしが死に近づくほど元気になる。わたしの真似で喋るようにもなったんだ。まったく。」
「……それで、いいんですか。私ならっ、その……治せるかもしれません。」
「ははっ……面白い事を言うね。まあ仮にそうだとしても、治してもらわなくていい。」
お爺さんは影の方を見る。
「こいつは昔からの友達みたいなもんだ。治ったって長くない。こいつに看取られるなら──それがいい。」
「ミとるゥ……。」
「……分かりました。色々聞いてすみません。」
「いいんだよ。面白い話ができた。それよりほら、お見舞いに来たんだろう?早く行ってやりなさい。」
私はお礼を言って、2人の元に戻った。
もう受付での処理は終わっていて、すぐにお見舞いに行けるみたいだ。
移動中、2人にお爺さんのことを話す。
「へぇ……珍しいね。特異体質だ。まあその人の人生だし、いい生き方だと思うな。」
「生まれつきかぁ、怖くなかったのかな。」
反応は意外とあっさり。
でも私はあの人のことを忘れないと思う。
あれも一つの、肯定の形なのかもしれない。
そうして、チハヤの病室にたどり着いた。
……私でも分かる。
異質な感じがドアの隙間から漏れ出していた。
アオイも怖がっている。
まだ痕跡が分からない私ですらこれだ。想像していた以上に、ずっと重い。
「2人とも、開けないならボクが開けるからね!」
「あぁそれはまずい。開けるから……。」
満を辞してドアに指をかける。
そっと開ける。音がしないくらいに、そっと。
すると中から、チハヤの声がした。
「え、姉ちゃんでしょ?何してんの?」




