第17話 変身!
「これ……チョーカー?」
「正解!」
それぞれにぽいっと渡される。
「着けてみて!」
「ヌイちゃんありがとう!かわい〜。」
「こ、これでいいの?」
普段しない種類のお洒落だからぎこちない。
でも憧れてはいた。
首元にひんやりとした感触が走る。
……いいもの貰っちゃったかも。
「いくよー!」
ヌイがそう言った途端、チョーカーが光り出す。
ただのチョーカーじゃないとは思ってたけど、なにこれ……!
首から全身にかけて、華やかな装飾が施されていく。
体がふっと軽くなる感覚とともに、その変化は終わった。
次の瞬間には、私たちはいかにも魔法少女といった具合の衣装を着ていた。
フリルのついた袖。胸元のでっかいリボン。
それに、ショート丈のポンチョ。
どこか制服チックな雰囲気を感じる。
ポンチョは、ブレザーを改造したものみたいだ。
「魔法少女といえばこれでしょ!ボクが作った自信作、変身チョーカー!今日はこれを作るから家にこもってたんだ。」
「へ、へぇ……。で、なにこれ?」
「戦闘中の身体能力を補助してくれる、魔法少女の正装だよ。しかも!」
ヌイは今までよりも自信に満ちた表情で、その機能について語り出す。
「その時に着てる服に合わせて、衣装がアレンジされるんだ!今は制服が元になってる。」
「それに、チョーカーを隠したい時は、肌の色に変色して見えなくできる!」
「すごい……そんな事できるの?流石〜!」
「でも、なんか都合良くない……?」
「なっ……!ボクの魔法は裁縫だよ?得意分野どころじゃない。これが本業レベルなの!」
「ごめんごめん、ありがとうヌイ。これすごく可愛いと思う!大事にするね。」
「私も!ありがとうね、ヌイちゃん!」
今日はそんなところで解散した。
できるだけ着けたままで生活して欲しいらしい。最初は無理だと思ってたけど、馴染むのが早すぎる。これがヌイの魔法かぁ。
ヌイもアオイも、自分の得意分野を見つけてる。私も頑張らなきゃ……!
風魔法は、空気の魔法。
その解釈を広げるだけ、できることが増えていく。鎌鼬だってそうだった。
私は、苦手な物理の教科書を開いた。
中学の理科の教科書も引っ張り出す。
「ヌイ、私頑張る。だから教えて欲しい。先生になって!お願いします……!」
「いいね。まかせてよ。」
えっと、まず圧力……。あ、そうだ。空気にも当然重さがある。
風、というか物体は、速いほどエネルギーが大きくなるのか。
速さの分だけ威力が増す。これは使えそうだ。
とそこで、一口コラムみたいなところに面白そうなものを見つけた。
「見てよこれ、ベルヌーイの定理だって!ヌーイ!」
「もう、ちゃんとしてよね。それは流れが速いほど圧力は小さくなる、っていう式だよ。」
「……ふうん?」
「空気や水みたいな流体にも、当然エネルギーはある。その速さ、圧力、高さの合計が一定になるんだよ。」
何言ってるかわからなかった。
「何言ってるか分からないって顔だね。うーん……ドライヤーの風!風が強いところに髪を近づけると?」
「風に流されて浮くね。」
「そう!それは、風に引き寄せられてるんだ。ドライヤーは、空気が早く動いてるでしょ?そこの圧力が低くなるの。」
……なんとなく分かった気がする。
空気がスカスカだと、そこに流れ込んでくるんだ。それが、引き寄せる力。
でも、ちょっと分かったからって実行できるかな……。水みたいに目に見える訳じゃないし、イメージが難しい。
「まあ、大学レベルの物理学だからね。体感で慣れるしかないよ。」
「体感って……。」
私は手のひらに意識を集中させる。
そこだけ空気をスカスカにするイメージ……。
風を吹かせるんじゃない、スカスカ……!
肌に触れる感覚がさっきまでと違う。
周りの空気が集まってくる感じがした。
「えっ、ヌイ!これのこと!?」
「そうそう、そういうこと。やっぱりセンスあるねー。」
ほんの少しだけど、できた。
こういうのを積み重ねよう。そんでチハヤを治すんだ。
いつかこのことをアオイに話せるといいな。
……そういえばアオイって、きょうだいいるのかな?




