第16話 一緒に行こうよ
うげーー。
案の定目覚めは最悪。いい加減慣れたい。
頭痛と格闘しながらノロノロ準備を進めていると、外からアオイの声がした。
「フウカちゃーん!一緒に学校いこー?」
まずい、まだ全然準備が終わってない。
「ちょっ……ヌイ、もうすぐ行くよって伝えてきてくれない?」
「はーい!」
大急ぎで荷物をまとめる。
外から「待ってるよー!」と言う声がした。
あぁっもう前髪っ!定位置につけ!こっちは一秒でも長く可愛くいたいんだよ!!
外ではアオイがヌイを抱っこして、扉の前で待っていた。
((うわぁ……ドタドタしてる。急いでるなあ……))
ガチャンッ!
勢いよく扉が開く。
出てきたのは、ブレザーを片手に持ち、もう片方にリュックとサブバッグを抱えたフウカ。
「ごめん、おまたせ!行こっ!ほら、ヌイもこの中入って!」
「あ。ボクはやることあるから、今日は行けないや。」
「何〜?ヌイちゃん隠し事?なにやるの!」
「ふふん、秘密ー。」
そうして、アオイと2人で登校することになった。そもそも友達と学校に行くのも初めてだから、余計に緊張する。
「……ってか、誘ってくれてありがとね。なんか嬉しい!」
「こちらこそ。私、誘うの初めてだったの。だから今、少し緊張してる。」
そう言ってくすくす笑う。
そのあとも、他愛もない話をして歩く。
いつもの道が短く感じる。
もうすぐ学校に着いちゃう。
──と思った矢先。
頭上に違和感。
確認する前に魔法で薙ぎ払った。
植木鉢の形をした影。
「グエー」という、知性を全く感じない声を上げながら、私たちに立ち向かう。
「フウカちゃん、これも影……?」
「うん……。ちっちゃいけどそう。」
両手に収まるほどの大きさ。
簡単に吹き飛ばせるので、ブロック塀に叩きつけて、植木鉢を割った。
「よし、学校行こ……う……?」
割れた植木鉢から種が出てきた。
その種はブクブク音を立てて、人の頭ほどのサイズになる。
根っこが触手のようにうねうねしていて、本体の表面は血管のようなものが脈打っていた。おまけに湿っている。
「うわっ、キショ。」
でも、ちょうどいい。こいつを実験台にする。
風で皮膚が裂ける鎌鼬現象。風魔法なら、再現できるはず……!
ベチャッ……
影の上半分を切り落とせた。
やっぱり、空気の操作の解釈が、私の魔法の本質だ。
でもそいつはすぐにブクブク再生してしまった。どうしよう、切りまくったら倒せるかな。
「ちょっと待っててね……」
そう言ってアオイはカバンを漁り出した。
その間にも、影は触手をうねうねさせてこちらに近づいてくる。
「あった!」
取り出したのは例の本。
それは一瞬で、ありえないほど大きくなった。
それを掲げて──。
「えいっ!」
声は衝撃音に掻き消された。
そして次の瞬間、種は跡形もなく消えていた。
「……これで倒したかな?じゃあ、学校いこ〜!」
アオイは凄いなあ。釣り合うくらい強くなりたい。
それでチハヤを……。
考えかけて、やめた。いつか言おう。
今はこれでいいんだ。
学校のことはあまり覚えていない。
アオイはクラスが違うから話せないし、今日は7限まである。しかもほとんど理数系。
頭も痛い。でも、初めての時よりマシだ。
気づけばチャイムが鳴っていた。
放課後、また昨日のように2人で帰る。
最近日が伸びてきた。
そろそろブレザーじゃ少し暑いくらいには、夏の匂いがする。
「ねぇアオイ、暑くない?」
「確かに。でも、もう皐月……昔の日本だと、初夏だからねぇ。」
なんて趣のある!とはならない。だって暑いもん。
なんて話して、もうすぐ家だ。
この角を曲がっ……て?
「2人ともおかえりー!」
「ちょっ!ヌイ、なんでいるの!」
「人いないか確認したよ。直前まで隠れてたしね。2人のこと驚かせたかっただけー。」
「あはは、びっくりしちゃった。」
アオイは呑気に笑っている。
ヌイが何の用もなくこんな事をするタイプとは思えないので、一応理由を聞いた。
「……で、なんで驚かせたの?」
「これを渡そうと思って。」
そう言って、ヌイは尻尾にかけていたアクセサリー……にしては少し大きいそれを、両手に持ち替えた。
「じゃーん!はい、これ!」
ヌイから渡されたのは──。




