第15話 努力ってさ
私たちの目標。それは──
「「世界を救うこと。」」
アオイの表情はさっきからびくともしない。
そりゃいきなり世界を救う、なんて言われても理解できない。
「えっとつまり……誰も否定されない世界を作りたいの。」
「あー……なるほど?」
否定し合う表と裏の世界。
その2つが、どっちも存在してていいような、何か大きなきっかけを作る。この矛盾を壊す何かを。
「まだちゃんと理解できてないけど、力になりたい。」
「それって……!」
「一緒にやる!きっとその世界の方が、居心地がいいと思うんだ。」
居場所……。みんなに居場所のある世界。
いいこと言うなぁ……。
「相性も良いしね。」
ヌイが口を開く。
「アオイが近距離、フウカが遠近どっちもいける万能型。ボクは支援役かな?」
「「なにそれ。」」
戦闘そのものについては、まだまだヌイに教わることになりそうだ。
とりあえず今日は帰って、もう休もう。きっと疲れがどっとくるはず。
「私んちこっちだけど、アオイは?」
「私もそっちだよ〜。」
何回か分かれ道があって、その度に同じ質問をしたが、毎回「私もそっちだよ〜。」と返ってくる。
さすがに違和感を覚えたので聞いてみた。
「アオイって中学どこだった?私は第四。」
「私、第三!近いね。」
隣の中学校。
いやだからって、こんなに帰り道が同じはずが……。
あれこれ考えているともう家に着いてしまった。
「「じゃあ私そろそろ家だから……」」
声が重なる。え?
よく聞いたら、私の家から道路を挟んで斜め前がアオイの家だった。
学区が違うだけだった、というオチである。
夕暮れの住宅街に、笑い声が響いた。
「なんだそういうことか〜!とにかく、今日はおやすみ、2人とも!」
「おやすみ!アオイもゆっくり休んでね。」
自室に戻ってからは、明日の魔力過負荷に怯えつつ、今日の出来事を振り返っていた。
私はまだ弱い。
天才を目の当たりにしたこともあるだろうけど、その事実を思い出す度に、自分の輪郭がぼやけていくような不安感を覚える。
このままじゃ、置いていかれる気がする。
「ねえヌイ、私って弱いよね。」
「え?うん。なんで?」
ヌイはいつもサラッと残酷なことを言う。でも絶対、嘘は吐かない。
「今日だって、あの状況をなんとかする方法があったはずなんだよ。この前だって、もっと簡単に勝てたかもしれない。この先──」
守れなかったらどうしよう。
口にするのが怖くなって、一瞬躊躇った。
その隙に差し込まれる。
「言ったじゃん。フウカは努力型って。環境を使った戦い方だって、風魔法の得意分でしょ?それに、戦闘IQ高いしさ。」
努力、ね。
……報われた苦労だけが、努力と呼ばれる。
報われなかったら、ただの消耗だ。
「……似てるなあ。」
「何の話?」
「なんでもない。……とにかく、フウカは強くなれるよ。分かるんだ。」
ヌイは、少し目を細めて言った。
笑っている。
その目の奥には、郷愁と期待と信頼が滲んでいた。
時々見せるこの顔は、きっと私に向けられたものなんだろうけど、やけに湿度が高い。
ヌイらしくない……というより、私たちの距離感にしては、ちょっとだけ変。
……まあでも、ヌイがそこまで言うなら、きっと何かしらの確信があるんだろうな。
「もう今日疲れちゃった。考えるのやーめた!お菓子食べちゃおーっと。」
「じゃあボクもやーめた!あ、ゴミは捨ててね。」
今日は早めにお風呂に入ろう。
それで、2人で寝るんだ。




