第13話 桁違いなんだよ
戦っている時は気づかなかったが、もう日が沈む寸前だったらしい。
東向きの窓からは何の光も入ってこない。
暗い教室の中で、私たち3人は唖然としていた。
「それ……だね。魔法。」
ヌイが静寂を破った。
その一言をきっかけに、私たちは一斉に慌てだす。
ヌイは魔法の正体と威力に驚いてあちこち歩き回っているし、アオイは半分ロッカーに寄りかかりながら、ヌイと私を交互に見ている。
私は、教室の惨状と、自分より遥かに強い魔法を目撃したことで頭が真っ白だった。
何から考えていいのか分からない。
酸欠なのか、視界がゆらゆらする。
──違う。
これはきっと現実が変わって……。
ジッ……カチッ。
蛍光灯がつく音がした。
砕けた黒板も、床も、天井も、何事もなかったように元に戻っていた。乱れていたのは机だけ。
まだ日は沈んでいない。
「あれっ、この時間……私がフウカちゃんたちに本を見せた時に戻ってる……?」
「あ、まだ言ってなかったね。影の現実改変を阻止すると、元あった世界線に戻るんだよ。ちょっと影響は残るけど……。」
今回は大きな怪我もなく勝てた。体に違和感はない。
ただ目の前にとっ散らかった机が並んでいる。
……これだけで済んだのは、多分アオイのおかげだ。
「と、とりあえず……勝ったよね、これ。」
「うん、勝ったね。というか瞬殺だったね。」
ヌイと私は、アオイの方を見る。
「え、私……」
「すごかったよアオイ!」
「うんうん、ボクびっくりしちゃった!」
アオイは戸惑いながらも、
「や、やったー……?」と喜んでくれた。
「フウカの絆創膏の件は、応用だったみたいだね。多分、今のが本来のアオイの魔法だ。」
「待ってヌイちゃん、私まだ自分の魔法とか何も分かって──
その先の言葉を掻き消すように、教室の扉が開く音がした。
見回りの先生だろうか。
「君たち3人とも早く帰れよ〜。……って、あれ?2人だけ?」
「気のせいです。」
「私たち2人だけでしたよ?」
「いやでも、確かに3人の話し声が聞こえた気がしたんだが……」
「声真似です。」
「そうそう、この子けっこう上手くて。」
「……まあいいか。にしてもこのクラス、机汚いな。じゃあ2人、並べ直すの手伝ってくれ。」
ヌイはただのぬいぐるみだ。クレーンゲームの景品の。だから、さっきいた場所に転がっている。
それを拾い上げたのは先生だった。
「このぬいぐるみ。君たちのか?ここ置いておくぞ〜。」
ヌイは教室の一番前、教卓の上にちょこんと乗っている。
時々アオイと目を合わせて、くすくす笑いながら机を綺麗に並べた。
「「さようならー!」」
私たちは元気よく教室を出ていった。
校門を出てすぐ、ヌイはまたサブバッグから顔を出す。
「危なかった……2人ともフォローありがとう。」
「いいのいいの、気にしないで。」
「ヌイちゃん面白かったよ。」
私たちが2人揃うと、ヌイはあっという間にいじられキャラになる。今も、うげ〜っとした顔を両側から突っつかれている。
「とにかくっ……!アオイはもっと自分の魔法を知るべきなんだよ。その才能も!」
「そうだね。まだヌイちゃんに聞き足りないこといっぱいある。」
アオイは改まって、真剣に聞く。
「私の魔法……というか、魔法って何?」
あ、私がヌイと出会った時と同じ質問。
「魔法は……魔法だよ。現実をねじ曲げる力。」
今なら分かる。
現実をねじ曲げる力……その言い方じゃ、影とやってることは変わらない。
その先の考えが言葉になる前に、ヌイが口を開く。
「アオイの魔法は本だね。見た目通り本が武器。でも本人の基礎的な魔力量の桁が違う。」
「待ってよヌイ、本が武器って……魔導書的な物なんじゃないの?」
「本来はそうだよ。本に書いたことが現実になる。できることの多様さは、本人次第だけどね。」
「じゃあなんで──」
「言ったでしょ?アオイは魔力量がイカれてる。直接殴った方が強い。つまり、」
「近距離特化型、パワー系魔法少女だ。」




