第11話 控えめ魔法少女
アオイさんは首を傾げる。
「とっ、とぼけないでください!あの絆創膏に……魔力込めてたでしょ……!」
私はすっかり治った右手を見せる。
「普通のやつですけど……それくらい効いたってことですか?」
「ちがいます……。」
気まずい空気の中、私のサブバッグが勝手に開き出す。ジジジと音を立てて顔を覗かせたのは、ヌイ。
「キミ、無自覚のタイプ?」
一瞬、場が凍る。
「「うわあああ!!」」
「出てきちゃうの?!」
「人形が喋った!!」
これじゃ収拾がつかない。もう説明するしかなさそう……。
ヌイのこと。私の魔法。影。
それから、その頭痛は魔力過負荷かもしれないということを伝えた。
アオイさんはポカーンとしたまま話を聞いていたが、手をつたってアイスが床に落ちて、そこでようやく我に帰った。
「ハッ……えっとつまり、フウカさんとヌイさんは、魔法少女?で、私も……?」
「と、いうことになりますね……。」
変な人だと思われたよなぁ……。
アイスがだめになるまで話し込んじゃって申し訳ない。
「すみません!私のせいで……。アイス買い直してきます!」
「いいのいいの!代わりに、面白い話いっぱい聞かせてもらったから。」
しばらく押し問答が続いて、気づけば2人で階段の踊り場でアイスを食べることになった。
ここは外だから、夕陽がよくみえる。
本当は3本くらい食べられるけど、私のせいでこうなってるし控えめに……。
「もう、仲良くなったと思いますよ。どうです?タメ口で話してみるのは。ここは風が気持ちいい〜!ね、フウカちゃん!」
「そうだねっ!アオイ……ちゃん?」
私はちゃん付けで呼ぶことに慣れていなくて、違和感がすごい。多分それも見透かされている。
「呼び捨てでいいよ。」
「ありがとう、アオイ……!」
「ヌイさんは……ヌイちゃんでいいよね!」
「えっ、なんで分かっ──」
「ヌイちゃんは可愛いねぇ〜。ん?なんか言った?」
「……なんでもない。」
2人が仲良くなって何よりだ。
にしても、アオイの魔法が気になる。でも本人は無自覚みたいだし、手がかりが……。
「アオイ、自分の魔法に心当たりない?あの日変わったことをした、とか。」
「あの日はいつも通りだったよ?お風呂入って、ご飯食べて、日記書いて、寝ただけ。」
「それかも!!」
ヌイが突然声を上げるものだから、びっくりした。どこに引っかかったんだろう。日記?
「その日記、なんて書いた!?」
「えっとね……あの子の怪我が、早く治りますように〜って書いたかな。」
「──やっぱり。願いが魔力になることは、よくあるんだよ。」
「アオイの魔法は、本とかペンに関係するものだ……!」
ヌイの声が一段高くなる。
「明日、その日記帳とペンを持ってきて欲しい!」
普段見せないヌイの興奮ぶりに驚いた。意外と人間くさいところがある。
にしたって、そんな食い気味にお願いするなんて……まだ仲良くなったばかりなのに。
アオイとは明日も会う約束をして、そこでお別れした。
家に帰ってからは、ヌイと会議を始める。
「もー、あんなにがっつかないでよね!」
「あはは……ごめん、つい気になって。でもあの子、無自覚だけど多分すごく強い。フウカが努力型なら、あの子は完全に才能型だ。」
その後は魔法の遠隔発動とか持続時間がどうとかの話を聞かされたが、いまいち覚えていない。
そして次の日。
「これがその本だよ。ペンは筆箱のこれ。百均のだけど……」
「「分厚っ」」
辞書くらいある。そんな日記帳ある……?
「それ、どこで買ったの?」
「うーん、いつだったかは忘れたけど、書いても無くならない日記帳をください!ってサンタさんにお願いしたクリスマスに、枕元にあった。」
それじゃん……。
ヌイと顔を合わせる。間違いない。
「この本、書いても消えるんだ〜。だから書き放題!エコなんだよ!」
お願いが叶って何より。
でもツッコミどころが多すぎる。
その時だった。
バチィン!
コンセントから火花が散る。
その後も、教室中のコンセントが立て続けに煙をあげだし、仕舞いには蛍光灯が消えた。
散った火花が集まってできたのは、燃え上がる炎みたいな……
「影だ……!タイミング悪いんだよ!!」
その炎が天井に達する前に、風魔法で消し飛ばそうとする。
が、余計に燃え上がってしまった。
影に顔らしき模様が浮かび上がる。
──笑った。
こいつ最悪!!
前回はなんとかなった。けど今回は……!
アオイは戦闘経験がない。
ヌイは私の後ろに隠れている。
そりゃそうだ。魔法が通じるかはともかく、ぬいぐるみは燃やされたら終わりだ。
考えろ……!!




