表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】二振りの剣と星の航跡 〜次元を越え、時を超える少年の物語〜  作者: @SsRay
青年編 星の使命

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/36

ep29.準決勝戦 剣 VS 剣

「さあ、お待たせいたしましたぁぁ!! 本大会、最大の注目カード! 伝説を斬り伏せる鋼の意志、『剛剣のバルト』!! 対するは、一戦ごとにその底知れぬ実力を見せつける新星、シリウス!! 剣と剣、意地と誇りがぶつかり合う、純粋なる剣戟の時間がやってまいりましたぁ!!」


 地響きのような歓声の中、バルトがその無骨な鋼の剣を抜き、正眼に構えた。その鋭い眼光が、シリウスの腰にある一本の剣を射抜く。


「……シリウスと言ったな。お前のその二刀流、伝説で聞いている戦い方とは随分と違うようだな。その腰の一振りで、俺の剣と競ってみる気はないか?」


 バルトの問いに、シリウスはミラが鉱石を適当に固めて作った大会用の二本の剣を腕のアイテムボックスのリングにしまい、腰にある1本の星の剣を片手で構えた。


「……ああ。あんたには、本気で戦っても大丈夫そうだな。お言葉にあまえて、この剣を使わせてもらう。俺は二刀流だ。この剣は今は一本だが、俺が使いたいときに二本になる」


 シリウスが右手に力を込めると、光が弾けるように収束し、その手にはいつの間にか二振りの剣が握られていた。一本だったり、二本だったり。変幻自在に増えるその特異な得物を前にしても、バルトは微動だにしない。


「随分面白いな。二刀流か、しかも剣は常に二本というわけではないようだな。面白い。俺もこの適当な剣ではなく、手になじんでいるこいつを使わせてもらおう」


 そういうと、剣聖バルトは手に持っていた適当な剣を場外へ捨て去り、腰の剣をゆっくりと抜き、先ほどとは比べ物にならないほどの隙の無い構えをとった。


「……来い」


 バルトの短く重い言葉が合図だった。地を蹴ったのは同時。


 シリウスは右手の剣で真横からの水平斬り、『右胴』を放つ。バルトの逃げ場を壁を作るように塞ぐ一撃。だが、バルトはその剛剣の腹で事も無げに受け止めると、そのまま力で押し返してきた。

 シリウスは即座に左手の剣を顕現させ、最短距離をぶち抜く『刺突』を繰り出す。


 キンッ! と火花が散る。バルトはわずかな首の動きで突きをかわし、カウンターの斬り下ろしを叩きつける。シリウスは左手の剣を消して身を翻すと、右の一本を両手で握り、下方向からの垂直上昇、『逆風』でバルトの顎先を狙い打つ。視界の外、股間から鼻先までを一本の線で結ぶ死神の軌道。


 しかし、バルトの剣筋は正確無比。その真の愛刀がシリウスの斬り上げを真っ向から叩き落とし、凄まじい衝撃がシリウスの腕を痺れさせた。


(……くっ、一刀の重みがさっきまでとは別次元だ! 二刀の回転数で翻弄するしかない!)


 シリウスは再び剣を二本に増やし、怒涛の連続攻撃を仕掛ける。

 左下から右上へ跳ね飛ばす『左逆袈裟』でバルトの体勢を崩しにかかり、間髪入れずに右下からの『右逆袈裟』を叩き込む。上下からの脱出ルートを完全に封じ込める。

 さらに左からの水平斬り、『左胴』で横の意識を奪った直後、左肩から右脇腹へ一気に振り下ろす『逆袈裟』!


 ガギガギィィィィン!!


 闘技場に金属音が連鎖する。シリウスの放つ「斬撃の網」は完璧だった。だが、バルトの剣は微動だにしない。ただの一振りの鋼が、シリウスの二振りの猛攻をすべて「正道」の重みで弾き返していく。ブラックとの戦いで見せた鋭い攻め。だが、バルトの経験に裏打ちされた芯を食う一撃には、あと一歩、威力が足りない。


「――甘いッ!」


 バルトの強烈な横一文字の『払い』。シリウスは二本の剣を交差させて防ぐが、その圧倒的な質量に身体が浮く。そこへ、バルトの逃げ場のない追撃が襲いかかった。


 ドォォォォン!!


 防戦一方に追い込まれたシリウスは、たまらず後退し、猛攻の余波で膝をついた。呼吸が荒くなり、視界が揺れる。目の前には、勝ちを確信したかのようにバルトがゆっくりと歩み寄ってくる。


(……くそっ、まだだ。俺には、まだ足りない……俺に足りない強力な一手。何かないか……)


 その時、シリウスの視界に、一本の光り輝く『大剣』の柄が透明だが俺にははっきりと見めていた。どうやらバルトには見えていないようだ。

 実体はない。だが、確かにそこにある。かつてブラックの絶望的な一撃から自分を守った、折れない心の具現。


『……これは、あの時のブラックからの一撃を守った剣……俺の心の剣か!』


 迷いはなかった。シリウスは膝をついた状態から、その場に現れた『心の大剣』を両手で力強く握りしめた。


「おおおおおっ!!」


 バルトの最後の一撃が振り下ろされる瞬間。

 シリウスは全身のバネを使い、回転しながらその巨大な光の刃を斜め上へと振り抜いた。その瞬間透明な剣がバルトの視界でも認識できる形に変わり、バルトの目前で巨大な剣が具現化された。


 ガガギィィィィィン!!


 物理法則を置き去りにした衝撃波が闘技場を揺らす。バルトの鋼の剣が、まるで木の葉のように宙を舞い、観客席の遥か外へと吹き飛ばされた。

 静寂。

 そして、バルトの首筋に、シリウスが握る三本目の『大剣』の切っ先が静かに据えられた。


「……悪いな。俺はどうやら、三刀流みたいだ」


 シリウスが不敵に笑うと、バルトは呆然とした後、豪快に笑い声を上げた。


「……ははっ! こりゃあ参った。見事な戦いだったよ。お前の二刀流中々いい守りと攻めをしているな。最後の剣には驚いたよ」


「勝者、シリウスぅぅぅ!! まさかの三本目の剣! 剛剣のバルトを力でねじ伏せ、決勝進出だぁぁー!!」


 会場の興奮は最高潮に達する。実況が喉を枯らして叫ぶ。


「さあ! これでついにカードが揃いました! 決勝戦は、シリウス VS 魔法剣士カイル!! 頂上決戦を前に、ここで少し休憩を挟みましょう! 皆さん、今のうちに呼吸を整えておいてくださいよ!」


 シリウスは消えゆく光の大剣を見つめながら、静かに息を整えた。

 次が最後だ。魔法剣士カイル。あの鏡のトリックをどう破るか。

 戦いの熱気は、一時的な静寂の中へと溶けていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ