ep19.誤算
――3年前。剣士の国、城門前。
「………………」
「なんだこいつらは……!? おいシリウス! こいつら、らちがあかねぇぞ!」
ベガの放った渾身の横一閃が、泥のような黒い兵士を両断した。だが、切断面から溢れ出した闇は重力を無視して瞬時に癒着し、何事もなかったかのように再生する。
正面から振り下ろされた黒い大剣を、俺は右手の星の剣で辛うじて受け止めた。だが、その衝撃は予想を遥かに超えていた。
「くっ、あああああぁぁぁ!!」
腕の骨が軋むほどの重圧。慌てて左手に星の剣を生成し二刀流となり、添えて押し返そうとしたが、一瞬遅い。力負けした俺の身体は、石畳を削りながら後方へと弾き飛ばされた。
「……ぐ、はっ……!」
膝を突き、痺れる両腕で剣を握り直す。
この数、そして圧倒的な再生能力。魔法大国の地下で戦った「黒い影」と同じだ。だが、存在の密度が全然違う。前は容易に制圧できたが、コイツらは強すぎる。
「これじゃ、王子を救ったのに、魔法大国なんか行けるわけがない。それどころか、俺たちが危ない」
「この城門の先にはまだ、あの大草原が広がっているんだ。そして、魔法大国にいるだろう――エルヴァスを倒さなきゃ、この世界は何も変わりはしないっていうのに!」
「こいつはきついぜ! 大したことない奴らだと思っていたが、再生するだけならいい。この力どうにかなんねぇのか? 前衛と後衛の連携がないことが唯一の救いだな、魔法の威力も尋常じゃねぇぜ」
「エルヴァスは弱かった。現況だとしても俺たちでなんとか出来たんだ。多分コイツらさえなんとか出来れば」
「二人とも、門への一本道さえ開けれれば、アイテムボックスからバイクを出して、新しいブースターで一気にぬけれるわ」
「ダメだ。俺たちが押すどころかどんどん押されている」
シリウスたちは回復薬を逐一飲むことで、何とか城門前の戦闘を必死に凌いでいた。
(対人戦用の剣か……。こう、囲まれるときついな。せめて範囲技でもあれば――そうだ。魔法はイメージ力で強くできるんだ。強いイメージで一気に、一時的にでも相手が攻撃できないようにさえ出来れば……)
◇◇◇◇ 回想
2時間程前。俺たちは意気揚々と三年前へ抜けた先の草原のゲートの前に立っていた。
『聖樹の紋章』、ハンスの『木剣の秘密』、王の『手紙』。これだけ鍵が揃えば、この世界を簡単に救うことができると確信していた。
跳躍先の年月日など、深くは考えなかった。ただ3年前の表示がでていたことから、すべてが狂い始める前の平和な時間へいけると何故か確信があった。
日時は、狙い通り「結婚式前夜」の剣士の国だった。
俺たちは真っ先に動き、ハンスと王様に言われたものを見せる前に、実際に鳥居行きたくはないが、これなら信用してもらえるかと言葉で説得することができた。
容易に、王子を暗殺しようとしていた内通者を特定。凶行に及ぶ前に拘束しようとした時、本性を現し、それが魔物だとわかり、討伐した。歴史の歯車を止めれるはずだった。王子の命を救い、次は国境を越えて王女を救う。そう信じて門を駆け抜けようとした瞬間、世界が俺たちを「拒絶」し始めた。
澄んでいた夜空がドロリと歪み、そこから黒い兵士や魔導士が、俺たちの《《歴史の改変》》を拒む免疫反応のように溢れ出してきたのだ。
街の人々には、俺たちが一人で狂ったように空を斬っているようにしか見えていない。歴史を変えようとした俺たちは、今、この世界そのものから《《不要のもの》》として排除されようとしていた。




