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湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
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第85話 水と油と酒と


 名坂警部補が越してきて一週間ほどが過ぎた。相変わらず千里と絡むと騒々しいが、水と油も時を経れば多少は馴染むものとみえる。呼び出しを受けた名坂警部補をバイクで送って行ったりもするらしい。


「聞いとくれよ。名坂警部補殿はな、土左衛門の現場に行って吐いちまったんだぜ。情けない」


「うるさい。水だけは駄目なんだ。それに……」


「それに?」


「とにかく駄目なものは駄目なのだから仕方あるまい。人のことなど放っておけ」


 ぐびぐびと缶ビールを空ける名坂警部補を見ながら、あのですね、と五郎が口を挟む。


「そんな話は自分たちの部屋でやってくださいよ。そもそも何時だと思ってるんですか?」


「夜の十一時過ぎだね。そんな時間に、こんな獣みたいな男を部屋に入れられるわけがないだろう。飲んだ後の片付けも面倒くさいし」


「完全に自分の都合じゃないですか。名坂さんも、なにか言ってやってくださいよ」


「気にするな。まあ飲め。この部屋は居心地が良くてな。楽しいし、なあ蜜柑?」


「せやせや、ただ酒を飲ましてもろて文句言うたらあかんわ。バチが当たるで」


 言って、けらけら笑う温州蜜柑である。そんな様子を佳乃が冷めた目で見ていた。


「みなさん、お酒は百薬の長と言いますが、ほどほどにしての話です。五郎様の学業にも悪影響、そろそろお開きに……」


「そう言わんと、たまにはおまんも飲め」


 蜜柑がワンカップを手渡すが、酒の匂いに顔をしかめる佳乃である。口をつけるのを躊躇ためらっていると、お子ちゃまには早いかと揶揄やゆされてくいっと飲んだところが、ぱたんと眠ってしまった。蜜柑が楽しそうに笑い、五郎が佳乃を寝床へ運ぶ。


 だがまあ、そろそろお開きにと立ち上がりかけた名坂警部補が流しを見つめて固まった。


「あの歌だ。あの歌が聞こえる」


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