第八十一話 最後の記憶
まばゆい光が部屋いっぱいに広がった。
「うっ……!」
柚は目を閉じる。
暁も腕で顔を覆った。
シロだけは、その光の中に立っていた。
気づくと――
そこは、千年前の王都だった。
「……ここ。」
シロが周囲を見回す。
目の前には、今よりずっと新しい王城。
そして、城の前には大勢の人が集まっている。
「記憶の中に入ったんだ。」
カイルの声が聞こえる。
けれど、姿は見えない。
シロは前を見る。
そこには、千年前の自分がいた。
隣にはアベル。
そして、もう一人。
銀髪の少年――カイル。
三人は並んで立っていた。
「本当に……仲間だったんだ。」
柚の声が聞こえる。
シロは小さく頷く。
すると、千年前のシロが笑った。
『これで全部終わったね。』
アベルが頷く。
『ああ。魔獣も倒した。』
カイルも笑う。
『これで王都は平和になる。』
三人は安心したように空を見上げた。
しかし――
突然、王城から黒い煙が上がった。
「何!?」
千年前のシロたちが振り返る。
王城の地下から、巨大な黒い魔力が噴き出している。
アベルが剣を抜く。
『地下に何かいる!』
三人は王城へ走る。
そして地下へ降りると――
そこには、黒い結晶があった。
今よりもずっと大きい。
シロが近づく。
『これ……何?』
カイルが結晶を調べる。
『分からない。』
その時。
王が現れた。
『触るな、魔王。』
シロが振り返る。
『陛下?』
王の後ろには、大勢の騎士がいた。
そして――
黒衣の男がいた。
『その力を、こちらへ渡せ。』
シロが警戒する。
『あなたは誰?』
男は笑った。
『私は、お前の力を必要としている者だ。』
『その力があれば、人間は永遠に魔獣から守られる。』
シロは首を横に振る。
『そんなことのために、この力を渡すつもりはない。』
男の表情が変わる。
『ならば、奪うまでだ。』
黒い魔力が一気に放たれる。
アベルがシロの前に立った。
『シロ!』
カイルも魔法を放つ。
三人で男と戦う。
しかし、黒い結晶からさらに黒い魔力が溢れ出した。
『まずい!』
カイルが叫ぶ。
『この結晶は、魔王の力に反応している!』
シロは力を抑えようとする。
しかし――
黒い魔力がシロの身体へ入り込む。
『いや……!』
アベルがシロの手を掴む。
『シロ!』
『大丈夫……。』
シロは苦しそうに笑う。
『私が止める。』
シロは全力で魔力を抑え込む。
そして――
黒い結晶が砕けた。
ドォォン!!
強烈な光が地下室を包み込む。
魔力が消えていく。
しかし、シロはその場に倒れた。
『シロ!』
アベルが抱き起こす。
『しっかりしろ!』
シロは目を開ける。
『……みんなは?』
『無事だ。』
アベルが答える。
『お前のおかげだ。』
シロは安心して目を閉じる。
しかし、その直後。
王が騎士たちへ命じた。
『今だ。』
アベルが振り返る。
『何をするつもりだ!』
王は冷たく答える。
『魔王を封印する。』
『待て!』
アベルがシロを抱きしめる。
『この子は王都を救ったんだぞ!』
王は首を横に振る。
『だからこそだ。』
『これほどの力を持つ存在を、自由にしておくわけにはいかない。』
アベルは剣を抜く。
『ふざけるな!』
しかし――
シロがアベルの腕を掴んだ。
『……やめて。』
『シロ?』
シロは静かに笑う。
『アベル。』
『みんなを守るためなら……私は封印されてもいい。』
『でも……。』
シロはアベルの手を握る。
『いつか、誰かが私を見つけてくれる。』
『その時は……。』
『もう一度、みんなと笑いたい。』
アベルの目から涙が落ちる。
『……必ず見つける。』
『約束する。』
シロは頷いた。
そして――
封印の魔法陣が輝いた。
その瞬間。
現在のシロの目の前で、記憶が途切れた。
「……。」
シロは黙って立っている。
柚が隣へ近づく。
「シロ……。」
シロは涙を拭った。
「全部、思い出した。」
暁が尋ねる。
「黒衣の男は、千年前からシロの力を狙っていたんだな。」
シロは頷く。
「うん。」
そして、もう一つ。
「でも……。」
シロは水晶の中を見る。
「最後のところだけ、まだ違和感がある。」
「何が?」
シロは水晶へ手を伸ばした。
「私が封印された後の記憶が――。」
「誰かに、消されてる。」




