第八十話 封じられた記憶
「ここに……私の全部の記憶がある。」
シロは巨大な扉を見つめていた。
扉の向こうから、また音が響く。
ドクン。
ドクン。
まるで何かが生きているようだった。
「……怖い。」
シロが小さく呟く。
柚はシロの隣に立つ。
「無理に開けなくてもいいよ。」
「でも……。」
シロは扉を見る。
「知りたい。」
「私は千年前に何をして、どうして記憶を奪われたのか。」
暁が頷く。
「なら、行こう。」
カイルも扉の前へ進む。
「この扉は、魔王本人と二人の異世界人が揃わないと開かない。」
柚が驚く。
「じゃあ……。」
「今なら開けられる。」
カイルが扉へ手を伸ばす。
しかし、触れる前に――
ガシャン!
黒衣の男が剣を振り、カイルを弾き飛ばした。
「させると思うか?」
「カイル!」
柚が駆け寄る。
「大丈夫。」
カイルは立ち上がる。
黒衣の男は扉を見る。
「その扉が開けば、すべてが終わる。」
シロが聞く。
「何が終わるの?」
男は答えない。
アベルが剣を構える。
「こいつは、何かを知っている。」
「だったら聞き出せばいい。」
暁が構える。
「三人で押さえる。」
柚も頷く。
「うん!」
三人が同時に動く。
柚が正面から男へ向かう。
暁が横から回り込む。
シロは後ろから魔力を放つ。
「これで!」
三方向からの攻撃。
しかし、男は黒い魔力を爆発させた。
ドォン!!
三人が吹き飛ばされる。
「くっ……!」
柚が地面に手をつく。
男がシロへ近づく。
「魔王。」
「お前だけは、ここで止める。」
その瞬間。
アベルが男の前に立った。
「させない。」
「またお前か。」
男が苛立つ。
アベルは剣を構える。
「シロには触れさせない。」
二人が激しくぶつかる。
剣と黒い魔力が何度も衝突する。
その間に、柚がシロへ駆け寄る。
「今のうちに扉を開こう!」
「でも、アベルが……。」
「アベルを信じよう。」
暁も頷く。
「俺たちは俺たちの役目をする。」
三人が扉の前に並ぶ。
カイルが言う。
「手を扉に。」
柚、暁、シロが同時に手を当てる。
すると――
銀色の光が三人を包んだ。
ゴゴゴゴゴ……。
巨大な扉がゆっくり動き始める。
「開いた……。」
シロが呟く。
扉の向こうには、広い部屋があった。
中央に巨大な水晶が浮かんでいる。
その中には――
一人の少女が眠っていた。
柚が息をのむ。
「……シロ?」
シロも目を見開く。
水晶の中にいる少女は、今のシロと同じ顔をしていた。
「私……。」
「千年前の私?」
カイルが頷く。
「そうだ。」
「これは、記憶そのものを保存している。」
シロが水晶へ近づく。
すると水晶の中の少女が、ゆっくり目を開いた。
「……え?」
柚が驚く。
少女の唇が動く。
『やっと……来た。』
シロは立ち止まる。
『私は、あなた。』
『そして、あなたが忘れている最後の記憶を――』
少女はシロを見つめる。
『これから見せる。』
その瞬間。
水晶がまばゆい光を放った。




