第七十九話 繋がった力
シロの胸元にあった黒い亀裂が消えた。
同時に、柚と暁を閉じ込めていた黒い壁も砕け散る。
パキィン!
「……消えた?」
柚が自分の拳を見る。
暁も驚いていた。
「俺たちの力が、シロに流れたのか?」
カイルが頷く。
「そうだ。」
「三人の力が繋がったんだ。」
黒衣の男は、信じられないものを見るように三人を睨んでいた。
「あり得ない……。」
「千年前でさえ、完全には繋がらなかったはずだ。」
柚が聞き返す。
「千年前も、私たちみたいな人がいたの?」
男は答えない。
代わりに、シロへ向かって黒い魔力を放った。
「ならば、今ここで壊す!」
「シロ!」
柚と暁が同時に動く。
しかし――
シロが二人の前に手を出した。
「大丈夫。」
「私がやる。」
シロの周囲に銀色の光が集まる。
黒い魔力が迫る。
「……止まって。」
シロが手を握る。
黒い魔力が空中で止まり、そのまま消えていく。
黒衣の男が目を見開く。
「そんな……。」
シロ自身も驚いていた。
「私……。」
「今、何をしたの?」
カイルが答える。
「魔力そのものを消したんだ。」
「今までの君にはできなかった。」
暁がシロを見る。
「力が変わったんだな。」
シロは自分の手を見つめる。
「うん。」
「でも、怖くない。」
柚が笑う。
「私たちがいるから?」
「うん。」
シロが笑った。
「三人で力を使えば、怖くない。」
黒衣の男が舌打ちする。
「……面倒なことになった。」
男の周囲に黒い魔力が集まり始める。
柚が構える。
「まだやるつもり?」
「当然だ。」
男は黒い魔力を圧縮していく。
「お前たち三人が揃う前に、片付ける。」
その時。
「やめろ。」
低い声が響いた。
全員が振り返る。
そこには――
アベルが立っていた。
剣を抜き、黒衣の男を睨んでいる。
「……アベル?」
シロが呟く。
アベルはシロを見る。
そして、柚と暁を見る。
「三人の力が繋がったのか。」
カイルが頷く。
「そうみたいだ。」
アベルはしばらく三人を見つめていた。
やがて、黒衣の男へ視線を戻す。
「お前の目的は、魔王を利用することだろう。」
男が笑う。
「だったら何だ?」
「なら、ここで止める。」
アベルが剣を構える。
「千年前と同じ失敗は、もう繰り返さない。」
黒衣の男が笑う。
「お前が何を言っている?」
アベルは答えない。
ただ、シロの前に立った。
「今度は俺が守る。」
シロの目が大きくなる。
「……アベル。」
黒衣の男が黒い魔力を放つ。
「ならば、全員まとめて消えろ!」
アベルが剣を振り抜く。
「来い。」
黒い魔力と剣が激突した。
ドォォォン!!
地下室全体が揺れた。
そして――
その衝撃で、壁の奥に隠されていた巨大な扉が姿を現した。
扉には、千年前の文字が刻まれている。
カイルが文字を読み、息をのんだ。
「……これは。」
柚が尋ねる。
「何て書いてあるの?」
カイルは震える声で答えた。
「『魔王の記憶を封じた場所』。」
シロが扉を見つめる。
「ここに……私の全部の記憶がある。」
その瞬間、扉の奥から――
ドクン。
大きな鼓動のような音が響いた。




