第七十八話 狙われた二人
「私たちを?」
柚が驚く。
カイルは頷いた。
「黒衣の男は、シロの力だけを狙っているわけじゃない。」
「二人の異世界人が必要なんだ。」
暁が眉をひそめる。
「俺たちが何のために必要なんだ?」
カイルは古文書を開く。
「千年前の記録によると、魔王の力を完全に目覚めさせるには、二人の異世界人の力が必要だった。」
柚が指差す。
「じゃあ、私たちを使ってシロの力を完全に目覚めさせようとしてる?」
「おそらく。」
「でも、それならどうして狙うの?」
カイルは答える。
「シロの力を奪うためには、まず二人を利用する必要があるからだ。」
暁が険しい顔になる。
「利用って……。」
「俺たちを操るつもりか?」
「そうかもしれない。」
その時。
ドンッ!!
地下室の壁が揺れた。
「何!?」
柚が振り返る。
もう一度――
ドォン!!
今度は壁の一部が崩れた。
瓦礫の向こうから、黒い魔力が流れ込んでくる。
「来た!」
暁が構える。
カイルが叫ぶ。
「二人とも、シロから離れないで!」
「分かった!」
黒い魔力が一気に広がる。
その中から、黒衣の男が姿を現した。
「見つけた。」
柚が睨む。
「またあんた……!」
男はシロを見る。
「魔王。」
そして、柚と暁を見る。
「そして、二人の異世界人。」
「三人とも、ここで終わりだ。」
黒衣の男が手を上げる。
黒い魔力が三人へ向かって飛んでくる。
「散れ!」
柚たちはそれぞれ別の方向へ飛ぶ。
ドォン!
床が大きくえぐれる。
「危なっ!」
柚が立ち上がる。
「暁!」
「いる!」
暁も無事だった。
しかし――
シロの姿が見えない。
「シロ!?」
柚が周囲を見る。
「どこ!?」
「こっち!」
シロの声が響く。
柚が振り向くと、シロは黒い魔力に囲まれていた。
「シロ!」
「来ないで!」
シロが叫ぶ。
黒衣の男がシロへ手を伸ばす。
「そのまま動くな。」
「お前の中にある力を取り出す。」
シロは首を横に振る。
「嫌!」
黒い魔力がシロの身体へ絡みつく。
「うっ……!」
「シロ!」
柚が走り出す。
だが、その前に黒い壁が現れる。
「くっ!」
柚が拳を叩き込む。
ガンッ!
壁はびくともしない。
暁も攻撃する。
「壊れろ!」
ドンッ!
それでも崩れない。
黒衣の男が笑う。
「無駄だ。」
「お前たち二人を倒す必要はない。」
「動けなくしておけばいい。」
シロの身体から、黒い光が少しずつ抜き取られていく。
「やめて……!」
柚は壁を何度も殴る。
「シロを離せ!」
黒衣の男は答えない。
その時――
シロの胸元に、銀色の紋章が強く輝いた。
「……え?」
黒衣の男の手が止まる。
シロは涙を拭った。
そして、柚と暁を見る。
「二人とも……。」
「私に力を貸して。」
柚が頷く。
「もちろん。」
暁も拳を握る。
「ああ。」
二人の身体から、淡い光がシロへ向かって伸びていく。
黒衣の男の表情が変わった。
「まさか……。」
三人を繋ぐ光が、どんどん強くなっていく。
そして――
シロの胸元にあった黒い亀裂が、一瞬で消えた。




