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異世界に落ちた最強ヤンキー女子、幼なじみと無双します。  作者: S@Y@


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第七十五話 封印の記憶


アベルが去ったあと。


地下室には、重い沈黙が残っていた。


「……カイル。」


シロが振り返る。


「何?」


「アベルが言ってたこと、本当なの?」


カイルはすぐには答えなかった。


「千年前の私は……本当に暴走したの?」


しばらくして、カイルが口を開く。


「全部は本当じゃない。」


シロが顔を上げる。


「全部?」


「君は力を暴走させたわけじゃない。」


「ただ……最後の戦いで、力を使いすぎた。」


暁が尋ねる。


「何があったんだ?」


カイルは静かに話し始めた。


「千年前、魔獣が王都を襲った。」


「シロは人間を守るために戦った。」


「その時、魔王の力を狙っていた者たちも動いた。」


柚が眉をひそめる。


「黒衣の男の仲間?」


「その可能性が高い。」


カイルは頷く。


「シロは魔獣と敵を同時に相手にした。」


「そして最後に、すべての力を使って王都を守った。」


シロは黙って聞いている。


「じゃあ、力が暴走したんじゃなくて……。」


「自分の意思で使った。」


「そう。」


カイルは答えた。


「だから、アベルはシロを殺そうとしたわけじゃない。」


「シロが力を使い果たして倒れたあと、王家が封印を始めた。」


柚が拳を握る。


「やっぱり王家が……。」


「でも、アベルは最後まで反対した。」


カイルは目を伏せた。


「だから、あいつは今でも後悔している。」


シロは胸元に手を当てた。


「……アベル。」


その瞬間。


胸の奥で、また何かが光った。


「え……?」


視界が白くなる。


次の瞬間。


千年前の記憶が、はっきりと浮かんだ。


戦いが終わったあと。


傷だらけのシロを、アベルが抱きかかえている。


「しっかりしろ!」


「アベル……。」


シロは弱々しく目を開ける。


「私……勝った?」


「ああ。」


アベルは答える。


「お前のおかげで、みんな助かった。」


シロは安心したように笑う。


「よかった……。」


しかし、その直後。


大勢の騎士が二人を取り囲んだ。


「魔王を封印する。」


アベルが立ち上がる。


「待て!」


「この子は王都を救ったんだぞ!」


騎士たちは聞く耳を持たない。


シロはアベルの服を掴む。


「アベル……。」


「私は……どうなるの?」


アベルは答えられない。


やがて、封印の魔法陣がシロの足元に広がった。


「嫌だ……。」


シロの声が震える。


「私は、何もしてない。」


アベルはシロの手を握った。


「分かってる。」


「俺は、お前を悪い奴だとは思っていない。」


シロの目から涙が落ちる。


「じゃあ……助けて。」


アベルは唇を噛んだ。


「……必ず。」


「必ず、お前をここから出す。」


そこで記憶が途切れた。


シロは目を開ける。


頬には涙が流れていた。


「……アベル。」


柚が心配そうに尋ねる。


「思い出した?」


シロは頷く。


「アベルは……私を助けようとしてた。」


カイルが静かに言った。


「だから、あいつは今でも君を殺したくない。」


「でも、なぜ今は殺すと言っているのか……。」


カイルは言葉を止めた。


その時。


シロの胸元に、見覚えのない紋章が浮かび上がった。


「……何これ?」


ルークが驚く。


「その紋章……。」


王家の紋章でも、黒い紋章でもない。


見たことのない、銀色の紋章だった。


カイルの顔から、初めて余裕が消えた。


「……まずい。」


柚が振り返る。


「何が?」


カイルは紋章を見つめた。


「それは、千年前の封印が完全に解けた時に現れる紋章だ。」


シロが目を見開く。


「じゃあ……。」


カイルは静かに答えた。


「君の魔王の力が、完全に目覚め始めている。」

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