第七十一話 黒衣の男の狙い
ドォォン!!
王城全体が大きく揺れた。
「また来た!」
柚が階段の上を見る。
カイルは黒い結晶を握ったまま、静かに言った。
「急いだほうがいい。」
「黒衣の男は、もう王城の中にいる。」
暁が構える。
「なら、迎え撃つ。」
「待って。」
カイルが止める。
「普通に戦っても、あいつには勝てない。」
柚が眉をひそめる。
「前は私たち二人で追い詰めたけど?」
「それでも逃げられた。」
「今度は違う。」
カイルは黒い結晶を見る。
「今のあいつは、魔王の力を狙っている。」
「この結晶を使えば、さらに強くなる。」
シロが不安そうに尋ねる。
「じゃあ、どうすればいいの?」
カイルはシロを見る。
「結晶を返す。」
「私に?」
「うん。」
柚が驚く。
「でも、さっき危険だって言ってたよね?」
「全部は返さない。」
カイルは結晶を持ち上げる。
「少しだけ、君に戻す。」
「そうすれば、君自身の力を使って、残りを守れる。」
シロは結晶を見つめる。
「……怖い。」
柚が隣に立つ。
「怖かったら、私がいる。」
暁も反対側に立つ。
「俺もいる。」
シロは二人を見る。
「……うん。」
その時。
ガァン!!
地下へ続く扉が吹き飛んだ。
黒い煙が流れ込んでくる。
「見つけたぞ。」
黒衣の男が姿を現した。
その手には、黒い魔力が集まっている。
「魔王。」
シロが男を見る。
男はカイルへ視線を移した。
「その結晶を渡せ。」
カイルは首を横に振る。
「断る。」
「ならば、力ずくで奪う。」
黒衣の男が踏み込む。
柚と暁が同時に前へ出る。
「させるか!」
二人が攻撃する。
男は二人の拳をかわし、黒い魔力を放った。
「邪魔だ!」
ドォン!!
柚と暁が左右へ吹き飛ばされる。
「柚!」
「大丈夫!」
柚はすぐに立ち上がる。
暁も立ち上がった。
「まだいける。」
男は二人を見て笑う。
「何度やっても同じだ。」
その瞬間。
シロが前へ出た。
「もう、やめて。」
男がシロを見る。
「何?」
シロは震えながらも、男をまっすぐ見た。
「私はあなたについて行かない。」
「私は、自分で決める。」
男の表情が変わる。
「……愚かな。」
黒い魔力がシロへ向かって放たれる。
「シロ!」
柚が駆け出す。
しかし――
カイルが黒い結晶を掲げた。
「今だ!」
黒い結晶から光が溢れる。
その光がシロの身体へ流れ込んだ。
「……っ!」
シロの瞳が赤く輝く。
黒い魔力がシロの目の前で止まった。
そして――
シロは、ゆっくりと片手を上げた。
黒い魔力が、まるで命令に従うように消えていく。
男が初めて驚いた顔を見せた。
「……力を、制御しただと?」
シロは自分の手を見る。
「これが……私の力。」
柚が笑う。
「やったね、シロ。」
しかし、カイルの表情は険しい。
「まだだ。」
「何?」
「今のは、ほんの一部。」
カイルが黒衣の男を見る。
「そして、あいつも本気を出していない。」
黒衣の男の周囲に、さらに黒い魔力が集まり始める。
「……その通りだ。」
男が笑う。
「ここからが本番だ。」




