第七十話 黒い結晶を持つ少年
少年は、手の中の黒い結晶を見せた。
シロが一歩前へ出る。
「それ……。」
「私の力?」
少年は頷いた。
「正確には、君から奪われた力の一部だ。」
柚が少年を睨む。
「黒衣の男の仲間?」
「違うよ。」
少年は首を横に振る。
「僕は、あの男とは目的が違う。」
暁が警戒する。
「なら、何のために結晶を持ってる?」
少年はシロを見る。
「君を守るため。」
「守る?」
シロが首を傾げる。
少年は黒い結晶を握り直した。
「この力をあの男に渡したら、君は完全に支配される。」
「だから先に僕が持ってきた。」
ルークが疑うように尋ねる。
「では、なぜここに?」
少年は階段の奥を指差した。
「この先に、千年前の封印を作った場所がある。」
「そして、そこには君の記憶を戻すための装置が残されている。」
シロが目を見開く。
「私の……記憶を?」
「そう。」
少年は頷く。
「でも、簡単には戻せない。」
柚が聞く。
「どうして?」
「君の記憶には、魔王の力と一緒に封印されたものがあるから。」
「無理に戻せば、力まで一気に目覚める。」
暁が眉をひそめる。
「それって危険なんじゃないか?」
「危険だよ。」
少年はあっさり答えた。
「だから、僕は止めようとしている。」
柚は少年をじっと見る。
「……名前は?」
少年は少し笑った。
「カイル。」
「カイル……。」
柚が名前を繰り返す。
その時。
シロが突然、頭を押さえた。
「……っ!」
「シロ!」
柚が支える。
シロの視界に、また知らない光景が浮かぶ。
千年前。
同じ銀髪の少年が、黒髪の少女の前に立っている。
『必ず戻ってくる。』
少女が微笑む。
『約束だよ。』
そこで記憶が途切れた。
「……カイル。」
シロが呟く。
少年の表情が固まる。
「……思い出した?」
シロは首を横に振る。
「まだ全部じゃない。」
「でも……あなたの名前を知ってる気がする。」
カイルは少し寂しそうに笑った。
「それだけで十分だよ。」
その瞬間。
上の階から、大きな爆発音が響いた。
ドォォン!!
全員が振り返る。
レオンが叫ぶ。
「王城が襲われています!」
カイルの表情が変わった。
「もう来たか。」
柚が拳を握る。
「黒衣の男?」
カイルは頷いた。
「おそらく。」
「そして、あいつが狙っているのは――」
カイルは黒い結晶を見つめる。
「この結晶だけじゃない。」
「君自身だよ、シロ。」




