第六十九話 狙われた封印
王城へ戻ると、すでに騎士たちが慌ただしく動いていた。
「地下への入口を封鎖しろ!」
レオンが指示を飛ばす。
「黒衣の男はまだ見つかっていません!」
騎士の報告に、柚は眉をひそめる。
「じゃあ、まだ地下にいるかもしれない。」
「はい。」
ルークが頷く。
「もし封印の間を狙っているのなら、急がなければなりません。」
柚たちはすぐに地下へ向かった。
長い階段を下りる。
以前来た時よりも、空気が重く感じられた。
シロが胸元を押さえる。
「……近い。」
「黒い結晶が呼んでる。」
「急ごう。」
暁が先頭へ進む。
やがて、封印の間へ続く扉が見えてきた。
しかし――
「……開いてる。」
柚が足を止めた。
以前は閉じていた石の扉が、大きく開いている。
レオンが剣を抜く。
「全員、警戒を。」
ゆっくり中へ入る。
そこには、誰もいなかった。
中央の台座だけが残されている。
「……黒い結晶は?」
柚が目を見開く。
台座の上にあったはずの黒い結晶が、消えていた。
「まさか……。」
ルークが台座へ駆け寄る。
「ありません。」
「封印が破られた?」
暁が周囲を見る。
その時。
「いや。」
王の声が響いた。
振り返ると、王が入口に立っていた。
「封印そのものは破られていない。」
王は台座を見る。
「結晶だけが持ち去られた。」
柚が驚く。
「そんなことできるの?」
王は首を横に振る。
「本来なら不可能だ。」
「王家の血を引く者以外が触れれば、封印が発動する。」
暁が眉をひそめる。
「じゃあ、黒衣の男は……。」
王は黙り込む。
その時。
シロが台座の前へ歩いていった。
「待って。」
「何かある。」
台座の奥に、小さな亀裂が入っていた。
柚が覗き込む。
「これ、隠し扉?」
ルークが触れる。
ゴゴゴゴ……。
壁がゆっくり動いた。
その奥には、細い階段が続いていた。
「地下に、さらに地下がある……。」
柚が呟く。
王の顔色が変わった。
「そんなはずは……。」
「陛下?」
王は階段を見つめる。
「私は、この先の存在を知らない。」
全員が息をのむ。
すると、階段の奥から――
コツ。
コツ。
誰かが歩いてくる音がした。
柚が拳を構える。
暁も身構える。
「来る。」
足音が少しずつ近づいてくる。
そして暗闇の中から、一人の少年が姿を現した。
黒い服。
銀色の髪。
そして――
赤い瞳。
少年は柚たちを見ると、静かに口を開いた。
「やっと来た。」
「魔王と、二人の異世界人。」
シロが目を見開く。
「……あなたは誰?」
少年は微笑んだ。
「僕?」
「僕は――」
その手には、黒い結晶が握られていた。
「君の力を預かっている者だよ。」




