第七話 実戦試験
「予備が、もうございません……。」
受付嬢の言葉に、ギルド内は静まり返った。
ガレスは腕を組み、しばらく考え込む。
「困ったのう。」
「測定器がなければ、本来は登録できん。」
アルベルトが静かに口を開いた。
「ガレス殿、何か方法はありませんか?」
「ある。」
ガレスはゆっくり頷く。
「実戦じゃ。」
柚の目が輝いた。
「戦うの?」
「そうじゃ。」
「測定器で測れんのなら、実際に戦って実力を見るしかあるまい。」
「あたし、それなら得意!」
柚は嬉しそうに拳を握る。
暁はそんな柚を見て、小さく息をついた。
「嬉しそう。」
「だって体動かせるじゃん。」
ガレスは豪快に笑う。
「よし、ついて来い。」
◇ ◇ ◇
一行はギルドの裏手にある訓練場へ移動した。
「ギルドマスターが実戦試験をするらしい!」
「新人相手だって!」
噂はあっという間に広がり、多くの冒険者が集まってくる。
柚は辺りを見回した。
「人、増えたね。」
「俺たちのせい。」
「あ、そっか。」
「測定器二つも壊したし。」
「うん。」
ガレスは訓練場の武器置き場から木剣を一本手に取る。
「安心せい。」
「本物の武器は使わん。」
柚は首を振った。
「あたしも素手でいい。」
「いつもそうだから。」
ガレスは目を細める。
「後悔せんか?」
「しない。」
「面白い。」
アルベルトは少し心配そうな表情を浮かべる。
「どうか無理だけはなさらないでください。」
柚は笑顔で親指を立てた。
「大丈夫!」
「怪我しないように頑張る!」
その言葉に、アルベルトは苦笑する。
「怪我をしないように、ですね。」
ガレスは訓練場の中央へ歩いていく。
そして二人を見た。
「さて、どちらから来る?」
柚はすぐに一歩前へ出た。
「あたしから!」
暁は何も言わず、一歩下がる。
「柚、頑張れ。」
「任せて!」
柚は訓練場の中央へ歩いていく。
ガレスは木剣を肩に担いだ。
「一つ聞く。」
「なに?」
「本気で来るか?」
柚は少し考え、にっと笑う。
「死なない程度に。」
その返事に、ガレスは腹を抱えて笑った。
「はっはっはっ!」
「儂にそんなことを言った新人は初めてじゃ!」
周囲の冒険者たちは息をのむ。
ギルド最強と呼ばれる男。
高ランク魔獣を素手で倒し、測定器を二つ壊した謎の二人。
そのうちの一人が、今まさにガレスと向かい合っている。
ガレスは木剣を構えた。
「では、始めるぞ。」
柚も拳を軽く握り、笑みを浮かべる。
「いつでも。」
次の瞬間。
ガレスが勢いよく地面を蹴った。




