第六十七話 黒い紋章の魔獣
瓦礫の向こうから、巨大な魔獣が姿を現した。
体はこれまでの魔獣より一回り大きい。
四本の脚で地面を踏みしめ、その額には黒い紋章が刻まれている。
「……でかい。」
柚が見上げる。
暁も構える。
「気をつけろ。」
「普通の魔獣とは違う。」
巨大な魔獣が低く唸る。
「グルルル……。」
その視線が、柚たちを通り過ぎる。
そして――
シロへ向いた。
シロが一歩後ろへ下がる。
「私を見てる。」
柚がシロの前に立つ。
「だったら、私が相手する。」
魔獣が地面を蹴った。
ドンッ!!
一瞬で距離を詰めてくる。
「速い!」
柚が腕を交差させて受け止める。
ガァン!!
強烈な衝撃。
柚の足が石畳を削りながら後ろへ下がる。
「くっ……!」
暁が横から飛び込む。
「柚!」
拳を魔獣の脇腹へ叩き込む。
ドンッ!
しかし、魔獣はびくともしない。
「硬い……!」
暁が距離を取る。
柚も魔獣を見つめる。
「今までの奴とは全然違う。」
魔獣が再び襲いかかる。
柚と暁は左右へ散る。
魔獣の爪が地面をえぐる。
「危なっ!」
柚が飛び退く。
その直後、魔獣の口から黒い魔力が放たれた。
「柚!」
暁が叫ぶ。
柚は咄嗟に腕を前へ出す。
黒い魔力が直撃する。
ドォォン!!
煙が一気に広がった。
「柚!」
暁が駆け寄る。
「大丈夫!」
煙の中から柚が出てくる。
服は少し汚れている。
しかし、傷はない。
「……平気。」
柚は腕を確認する。
「やっぱり、身体がかなり強くなってる。」
暁が頷く。
「でも、あいつの攻撃は普通に痛い。」
「だったら。」
柚は拳を握る。
「もっと強く殴ればいい。」
「それしかないな。」
二人が同時に魔獣へ向かう。
柚が正面から攻撃する。
暁が後ろへ回る。
魔獣が柚へ爪を振り下ろす。
「今!」
柚が身体を低くしてかわす。
その瞬間、暁が魔獣の後ろ脚を蹴り飛ばした。
「グオッ!」
魔獣の身体が傾く。
「柚!」
「分かってる!」
柚が地面を蹴る。
そのまま跳び上がり――
「これで!」
拳を魔獣の額へ叩き込む。
ドォォォン!!
黒い紋章が砕けた。
「グオオオオッ!!」
魔獣が大きく吠える。
すると、額の黒い紋章から黒い煙が噴き出した。
ルークが叫ぶ。
「待ってください!」
「その紋章を壊してはいけません!」
柚が振り返る。
「え?」
ルークは魔獣を指差す。
「その紋章は魔獣を操るためのものです!」
「今、壊れたことで……魔力の制御が失われています!」
魔獣の身体が大きく震える。
「グオオオオオッ!!」
シロが胸を押さえる。
「違う……。」
「この魔獣……。」
「誰かに操られてるだけじゃない。」
柚が尋ねる。
「どういうこと?」
シロは魔獣を見つめる。
「苦しんでる。」
その瞬間。
魔獣の目から、黒い魔力が一筋だけ流れ落ちた。




