第六十一話 書庫に潜む者
ガシャン!!
書庫の奥で、再び物音がした。
柚がすぐに立ち上がる。
「誰かいる。」
暁も周囲を見回す。
「さっきまで気配はなかった。」
レオンが剣を抜く。
「全員、警戒を。」
老人は青ざめた顔で奥を指差した。
「この先には、古い記録を保管している部屋があります。」
「普段は誰も入りません。」
柚は頷く。
「じゃあ、そこを見よう。」
一行は慎重に奥へ進む。
書棚の間を抜ける。
すると、床に数冊の本が散らばっていた。
「落ちただけ?」
柚がしゃがみ込む。
しかし暁が首を横に振った。
「違う。」
「本棚の裏に誰かいる。」
その瞬間。
黒い影が横から飛び出した。
「!」
柚が反応するより早く、暁が腕を伸ばす。
ガッ!
影の腕を掴んだ。
「逃がさない。」
影は素早く身体をひねり、暁の手を振りほどく。
そのまま書庫の出口へ走る。
「待て!」
レオンが追いかける。
柚と暁も続く。
だが、影は扉の前で立ち止まった。
黒いローブ。
深くかぶったフード。
「またこいつ!」
柚が拳を構える。
黒衣の男は振り返る。
「ここまで気づくとはな。」
「何しに来たの?」
柚が問いかける。
男は答えず、手に持っていた紙を見せた。
「これを探していた。」
老人が息をのむ。
「それは……!」
「魔王の封印に関する記録……。」
男は紙を懐へしまう。
「これで十分だ。」
「待て!」
暁が駆け出す。
男は黒い魔力を放つ。
ドンッ!
暁が腕で防ぐ。
その隙に、男は窓へ向かって走った。
柚が追う。
「逃がすか!」
窓から飛び出そうとした男の前へ、柚が回り込む。
「捕まえた!」
拳を振り抜く。
男は咄嗟に腕で防ぐ。
ドォン!!
衝撃で男の身体が大きく吹き飛び、本棚へ激突した。
「ぐっ……!」
柚が驚く。
「今度は逃がさない。」
男は立ち上がろうとする。
しかし、その動きが止まった。
視線が柚の後ろへ向く。
「……来たか。」
「え?」
柚が振り返る。
そこにはシロが立っていた。
シロは男を見つめている。
「あなた……。」
「知ってる。」
男が笑う。
「思い出したか?」
シロは頭を押さえる。
「違う……。」
「でも……あなたの声を知ってる。」
男はゆっくりと立ち上がった。
「そうだ。」
「お前が封印される前から、私はお前のそばにいた。」
その言葉に、シロの表情が変わる。
「……私の、そばに?」
男は黒い魔力をまとい始めた。
「お前がすべてを思い出す前に、迎えに来る。」
「今度は邪魔をするな。」
柚が前へ出る。
「それは無理。」
「シロは渡さない。」
男は笑った。
「ならば――」
黒い魔力が一気に膨れ上がる。
「力ずくで連れていく。」




