第六十話 王家が隠した真実
「王家が隠してきた……?」
柚は老人を見つめた。
老人は周囲を確認してから、静かに扉を閉める。
「声を抑えてください。」
「この話を知る者は、今ではほとんど残っていません。」
暁が尋ねる。
「何が書いてあるんだ?」
老人は黒い紋章の本を見る。
「魔王についてです。」
「今まで伝えられてきた歴史では、魔王は世界を滅ぼそうとした存在とされています。」
「ですが、それは真実ではありません。」
柚が眉をひそめる。
「じゃあ、本当は?」
老人は答える。
「魔王は、千年前に世界を守った存在です。」
シロが小さく呟く。
「……やっぱり。」
老人はシロを見る。
その顔から血の気が引いた。
「まさか……。」
「あなたが、その少女なのですか?」
柚が一歩前へ出る。
「そうだよ。」
「シロは記憶を失ってるけど、魔王なんだって。」
老人はしばらくシロを見つめた。
そして、深く頭を下げる。
「……失礼いたしました。」
シロは慌てる。
「やめて。」
「私は、そんなに偉い人じゃない。」
その言葉に、老人は少しだけ目を細めた。
「……千年前の魔王も、同じことを言っていたそうです。」
「自分を特別な存在だとは思っていなかった。」
柚と暁が顔を見合わせる。
老人は本を開いた。
「ですが、魔王の力を恐れた一部の人間たちは、魔王を封印しました。」
「その際、力と記憶を分けた。」
シロが本を見る。
「だから、私は何も覚えてない……。」
「おそらく。」
老人は頷く。
「そして、その封印を利用しようとした者たちがいた。」
「魔王の力を手に入れれば、世界を支配できると考えたのです。」
暁が低く呟く。
「黒衣の男も、その一人か。」
老人は首を横に振った。
「分かりません。」
「ただ――」
老人の視線が、本の最後のページへ向く。
そこには、黒衣の男が持っていたものと同じ紋章が描かれていた。
「この紋章を持つ者たちは、今も魔王を探している。」
「そして……。」
老人はページをめくる。
最後の一文を見て、表情を強張らせた。
「『魔王の力を完全に取り戻すには、王都にあるもう一つの封印を開く必要がある』。」
柚が目を見開く。
「もう一つ?」
暁も険しい顔になる。
「じゃあ、地下の結晶だけじゃない。」
老人は頷いた。
「はい。」
その時。
シロが突然、王城のある方向を振り返った。
「……分かる。」
「また呼んでる。」
「今度は、さっきより近い。」
柚は立ち上がる。
「行こう。」
暁もすぐに立つ。
「王城の中を探す。」
しかし、その瞬間。
王立書庫の奥から――
ガシャン!!
何かが落ちる音が響いた。
全員が振り返る。
老人の顔が青ざめる。
「……まさか。」
「ここまで来たのか。」




