第五十八話 王立書庫
翌朝。
柚、暁、シロ、ルークは王立書庫へ向かっていた。
王城の中でも特に大きな建物だった。
扉を開けると、天井まで届きそうな本棚が何列も並んでいる。
「うわ……。」
柚が思わず声を漏らす。
「本、多すぎない?」
ルークが苦笑する。
「王国中の記録が集められていますから。」
「これ、全部読むの?」
「全部ではありません。」
「魔王に関する記録だけを探します。」
暁が本棚を見上げる。
「それでもかなりありそうだな。」
「はい。」
ルークは一冊の古い本を取り出した。
「まずは、この辺りから調べましょう。」
四人はそれぞれ本を手に取り、机へ向かった。
しばらくして。
「ない。」
柚が本を閉じる。
「これも違う。」
「これも。」
暁も本を閉じた。
シロは二人の様子を見ながら、黙々とページをめくっている。
「シロ、疲れない?」
「大丈夫。」
「自分のことだから。」
そう言って、また本へ目を戻す。
その姿を見て、柚は少し笑った。
「真面目だね。」
「知りたいから。」
シロは小さく答えた。
それからしばらくして。
「……あ。」
シロの手が止まった。
「どうした?」
柚が覗き込む。
開かれていたのは、かなり古い記録だった。
そこには、黒い髪の少女が描かれている。
その姿は、シロとよく似ていた。
「これ……私?」
シロが絵を指差す。
ルークが本を受け取る。
「これは……。」
ページには、古い文字で説明が書かれていた。
ルークが読み上げる。
「『魔王は、千年前に一度だけ現れた』……。」
「千年前?」
暁が眉をひそめる。
「そんな昔から?」
ルークはさらに読み進める。
「『魔王は世界を滅ぼすために現れたのではない』……。」
柚が身を乗り出す。
「え?」
「じゃあ、魔王って悪者じゃないの?」
ルークは続きへ目を走らせる。
「……『魔王は、世界を守るために戦った』。」
四人が同時に固まった。
シロも驚いた顔で本を見つめる。
「私が……?」
その時。
本の中から一枚の古い紙が滑り落ちた。
柚が拾い上げる。
そこには、たった一行だけ書かれていた。
『魔王を恐れる者こそ、真の敵である。』
柚は紙を見つめる。
「これ……。」
暁も隣から覗き込む。
「今まで聞いてきた話と、全然違うな。」
ルークは険しい表情になる。
「まだ続きがあります。」
「ですが、この先のページが……。」
本は途中で破れていた。
重要な部分だけが、何者かによって切り取られている。
「誰かが隠した?」
柚が尋ねる。
ルークは静かに頷いた。
「その可能性が高いでしょう。」
その時。
書庫の奥から、カタン……と小さな音がした。
四人が一斉に振り向く。
誰もいない。
しかし。
一冊の本だけが、棚からゆっくりと落ちてきた。
ドサッ。
その表紙には、黒い紋章が描かれていた。




