第五十七話 封印の力
パァァァン!!
強烈な光が地下室を包み込んだ。
柚は思わず目を閉じる。
「うわっ!」
数秒後。
ゆっくり目を開ける。
黒い魔力は消えていた。
中央に浮かんでいた黒い結晶も、静かに台座へ戻っている。
「……終わった?」
暁が周囲を確認する。
「たぶん。」
シロはその場に座り込んでいた。
「シロ!」
柚が駆け寄る。
「大丈夫?」
「うん……。」
シロは少し疲れた様子だったが、怪我はない。
柚はほっと息を吐く。
「よかった。」
その時。
「ぐっ……。」
低い声が響いた。
全員が振り向く。
黒衣の男が立ち上がっていた。
だが、先ほどまでとは様子が違う。
片腕を押さえ、苦しそうに息をしている。
レオンが剣を構える。
「まだ動けるのか。」
男は柚たちを睨む。
「……今日は退く。」
「だが、魔王の力は必ず取り戻す。」
柚が一歩前へ出る。
「させない。」
男は鼻で笑った。
「お前たちが何を言おうと関係ない。」
「魔王の力は、この世界に必要だ。」
暁が眉をひそめる。
「何のために?」
男は答えない。
ただ、シロを見つめる。
「いずれ分かる。」
そう言い残すと、男の足元に黒い魔法陣が現れた。
「待て!」
レオンが駆け出す。
しかし、男の姿は黒い光に包まれて消えてしまった。
「……また逃げられた。」
レオンが悔しそうに剣を下ろす。
ルークは黒い結晶へ近づく。
「ですが、今回は収穫があります。」
「何?」
柚が尋ねる。
ルークは結晶を慎重に確認する。
「封印は維持されています。」
「そして、シロの力がすべて結晶に戻ったわけでもありません。」
柚が驚く。
「じゃあ……。」
「シロには、まだ魔王の力が残っている?」
「はい。」
シロ自身も驚いたように自分の手を見る。
「私に……力が?」
暁が頷く。
「さっき、黒い魔力を自分で抑えた。」
「それだけでも十分すごい。」
シロは少しだけ笑った。
「私にもできた。」
柚も笑う。
「うん。」
「ちゃんと自分で止められた。」
王はここまでの様子を静かに見守っていた。
そして石碑へ目を向ける。
「まだ、この封印には秘密があるようだな。」
ルークが頷く。
「はい。」
「古文書を調べれば、何か分かるかもしれません。」
王は決断する。
「ならば王立書庫を使え。」
「魔王について残された記録を、すべて調べる。」
柚はシロを見る。
シロはまだ不安そうだった。
けれど、もう一人ではない。
柚と暁が隣にいる。
「じゃあ、調べよう。」
「シロが何者なのか。」
「全部分かれば、黒衣の男にも負けない。」
暁も頷く。
「次は逃がさない。」
こうして一行は、魔王の正体と黒衣の男の目的を知るため、王立書庫へ向かうことになった。




