第五十五話 黒い影の正体
黒い魔力が暁へ迫る。
「暁!」
柚が叫ぶ。
しかし、暁は避けなかった。
拳を握り、真正面から黒い魔力を殴り飛ばす。
ドォン!!
黒い霧が弾け、地下室の壁が大きく揺れた。
「……効いてない。」
暁が拳を見る。
傷はない。
柚も隣へ並ぶ。
「二人ならいける。」
「うん。」
影は二人を見つめる。
『……厄介な力だ。』
その声を聞いて、柚は眉をひそめた。
「その喋り方。」
「前に会った黒衣の男と同じじゃない?」
影は答えない。
代わりに黒い霧が濃くなる。
そして――
影の姿が少しずつ変わった。
黒い霧が消えていく。
現れたのは、以前森で戦った黒衣の男だった。
「やっぱり!」
柚が叫ぶ。
男は静かに笑う。
「気づいたか。」
レオンが剣を構える。
「貴様……!」
男はレオンを見ても動じない。
「私は魔王を取り戻しに来ただけだ。」
「お前たちには関係ない。」
柚が一歩前へ出る。
「関係あるよ。」
「シロは私たちの仲間だから。」
男の表情がわずかに変わる。
「仲間……?」
「魔王を仲間と呼ぶか。」
暁が答える。
「本人が望んでいるなら、それでいい。」
男は鼻で笑った。
「甘いな。」
「魔王が目覚めれば、そんな言葉を口にする余裕もなくなる。」
シロが震えながら口を開く。
「私は……。」
「誰かを傷つけたくない。」
男はシロを見る。
「それは今のお前だからだ。」
「本来のお前は違う。」
その言葉に、シロは苦しそうに頭を押さえる。
「……違う。」
「私は……。」
黒い魔力がシロの周囲に集まり始める。
「シロ!」
柚が駆け寄る。
だが、その瞬間。
男が黒い結晶へ手を向けた。
「ならば、力だけでも返してもらう。」
黒い結晶が激しく輝く。
「まずい!」
ルークが叫ぶ。
「結晶の封印が崩れます!」
「このままでは、魔王の力が一気に流れ出す!」
柚と暁は同時に結晶へ向かって走った。
「止める!」
しかし。
黒い結晶から巨大な黒い腕が伸びる。
二人の前に立ちはだかった。
「こいつ……!」
柚が拳を構える。
暁も構える。
その後ろで、シロが震えていた。
そして。
シロの瞳が、一瞬だけ赤く光った。




