第五十四話 封印の間
ドォォォン!!
黒い魔力が一気に噴き出した。
「下がれ!」
レオンが騎士たちを後ろへ下げる。
柚はシロの前に立った。
「シロ、こっち!」
「うん!」
暁も柚の隣に並ぶ。
「何か出てくる。」
黒い魔力は部屋の中央で渦を巻き始めた。
やがて、その中から一つの影が現れる。
人の形をしている。
しかし、顔は見えない。
黒い霧に包まれている。
「また黒い奴……。」
柚が拳を構える。
影はゆっくりとシロへ手を伸ばした。
『器を返せ。』
シロが怯える。
「器……?」
ルークが石碑を確認する。
そして、目を見開いた。
「待ってください。」
「この黒い結晶は、魔王そのものを封印しているのではありません。」
「何?」
ルークは石碑を指差す。
「ここには『魔王の魂を封じる器』とあります。」
「つまり……。」
暁が続ける。
「シロの魂を封じてるんじゃなくて。」
「シロから何かを抜き取って、この結晶に封じた?」
ルークは頷いた。
「おそらく。」
シロは胸元を押さえる。
「じゃあ……。」
「私の中に、何か足りないものがあるの?」
その瞬間。
影が笑った。
『ようやく気づいたか。』
柚が睨みつける。
「何をしたの?」
『魔王の力を封じた。』
『力だけではない。』
『記憶もだ。』
シロが息をのむ。
「……記憶?」
『お前から力と記憶を奪い、この器へ封じた。』
『だから、お前は何も覚えていない。』
柚の表情が険しくなる。
「じゃあ、この結晶を壊せば……。」
『元に戻る。』
その言葉に、シロが一歩前へ出る。
「じゃあ……。」
「壊して。」
しかし、ルークが慌てて止める。
「待ってください!」
「それは危険です!」
「なぜ?」
「封印されている力がどれほどのものか分かりません。」
「もし一気に解放されたら……。」
ルークは言葉を詰まらせる。
「この王都どころか、周囲一帯が消し飛ぶ可能性があります。」
柚は結晶を見る。
そしてシロを見る。
シロは不安そうに柚を見つめていた。
「……怖い。」
柚はしゃがみ込み、シロと目を合わせる。
「大丈夫。」
「すぐに壊したりしない。」
「ちゃんと考えてから決めよう。」
シロは小さく頷いた。
しかし。
その瞬間。
影が黒い魔力を放つ。
「話は終わりだ。」
「その力は、私がもらう。」
「させるか!」
暁が前へ出る。
影から放たれた黒い魔力が、一直線に暁へ迫った。




