第四十六話 王との謁見
王城の中へ入ると、柚たちは長い廊下を進んでいった。
壁には大きな絵画が飾られ、床には赤い絨毯が敷かれている。
シロは周囲を見渡していた。
「ここも……すごい。」
柚が小さく笑う。
「シロ、全部新鮮なんだね。」
「うん。」
「知らないことばかり。」
その返事に、柚は少しだけ表情を柔らかくした。
やがて、大きな扉の前へ到着する。
騎士が扉の前で姿勢を正した。
「陛下。」
「調査隊が戻りました。」
「入れ。」
中から低い声が響く。
扉が開かれる。
広い謁見の間。
その奥に、一人の男性が座っていた。
この国を治める王だった。
レオンたちは片膝をつく。
「ただいま戻りました。」
「報告を。」
王の視線が一行へ向けられる。
そして、シロを見た瞬間。
表情がわずかに変わった。
「……その少女は?」
レオンが答える。
「森の奥に封印されていた存在です。」
「調査中、黒い結晶の中から現れました。」
謁見の間がざわめく。
王は静かにシロを見る。
「黒い結晶……。」
「まさか。」
ルークが一歩前へ出た。
「陛下。」
「古文書に記されていた存在と一致します。」
「彼女は――魔王です。」
その言葉に、周囲の騎士たちが息をのむ。
王の表情も険しくなる。
「魔王……。」
シロは不安そうに俯いた。
「私は……。」
「何も覚えていません。」
「自分が何者なのかも。」
王はしばらく沈黙した。
普通なら、魔王と呼ばれる存在を警戒する。
しかし。
目の前にいる少女からは、敵意も殺気も感じられない。
王はゆっくりと口を開く。
「記憶を失っているというのか。」
「はい。」
ルークが答える。
「現在、彼女に危険な兆候はありません。」
「むしろ、先ほども我々を助ける行動を取っています。」
王は柚と暁を見る。
「そなたたちは?」
柚は頷く。
「シロは悪い子じゃないと思う。」
「だから守る。」
暁も続ける。
「少なくとも、今の彼女に敵意はない。」
王は二人をじっと見つめた。
しばらくして。
「……分かった。」
その一言で、謁見の間の空気が変わる。
「しばらくの間、この少女を王城で保護する。」
「そして、魔王について詳しく調査する。」
シロが顔を上げる。
「……ここにいてもいいの?」
王は頷いた。
「記憶を失った者を、理由だけで裁くことはできん。」
その言葉に、シロの表情が少し和らぐ。
しかし。
その時だった。
突然、謁見の間の窓が大きく揺れる。
ドンッ!
「何だ!?」
騎士たちが一斉に警戒する。
外から、鐘の音が響いた。
「陛下!」
兵士が慌てて駆け込んでくる。
「王都の外で……黒い魔力が確認されました!」
王の表情が変わる。
ルークが呟いた。
「まさか……。」
シロも胸を押さえる。
「……怖い。」
柚はすぐにシロの隣へ立った。
「大丈夫。」
「私たちがいる。」
だが、ルークは窓の外を見つめていた。
「黒幕が……動き始めたのかもしれません。」




