第四十五話 王都への報告
森を抜けた一行は、王都へ向かって歩いていた。
先頭を歩くのはレオンと騎士たち。
その後ろを柚、暁、シロ、ルークが並んで歩く。
シロは周囲を不思議そうに見回していた。
「どうしたの?」
柚が尋ねる。
シロは少し考えてから答えた。
「知らない場所ばかり。」
「でも、言葉や物の名前は分かる。」
「ただ、自分のことだけ思い出せない。」
ルークが頷く。
「記憶を失っていても、知識まで失われるわけではないようですね。」
「なるほど。」
柚は納得したように頷いた。
「じゃあ、シロって名前は忘れないでね。」
「うん。」
シロは嬉しそうに笑った。
しばらく歩くと、王都の大きな城門が見えてきた。
「戻りました!」
騎士の声に、門番たちが駆け寄る。
「レオン様!」
「ご無事で何よりです!」
しかし、すぐにシロへ視線を向けた。
「その少女は……?」
レオンは落ち着いた声で答える。
「今回の調査で保護した少女です。」
「詳しい話は王城で報告します。」
「承知しました。」
門がゆっくりと開く。
その先に広がっていたのは、活気あふれる王都の街並みだった。
石造りの建物。
行き交う人々。
大きな市場。
シロは目を見開く。
「……すごい。」
柚はその反応を見て笑った。
「初めて見ると、そうなるよね。」
暁も周囲を見回す。
「俺たちがこの世界に来た時も、似たような感じだった。」
「何もかも違って見えた。」
シロは二人を見る。
「二人も?」
「うん。」
柚は頷く。
「だから、少しは分かる。」
シロは安心したように微笑んだ。
王都には多くの人々が行き交っていた。
露店が並び、商人たちの声が響く。
その中で、シロは一軒の店の前で足を止めた。
色鮮やかな果物が並んでいる。
「……綺麗。」
「食べたい?」
柚が尋ねる。
シロは少し迷ったあと、小さく頷いた。
「少しだけ。」
柚は店主へ声をかけ、果物を一つ買った。
「はい。」
シロは両手で受け取る。
「ありがとう。」
一口食べる。
「……甘い。」
その表情が少しだけ明るくなる。
柚は笑った。
「気に入った?」
「うん。」
その様子を見ていたレオンは、小さく微笑む。
「本当に……魔王と呼ばれる存在には見えませんね。」
しかし、ルークの表情だけは険しいままだった。
「だからこそ、調べなければなりません。」
「黒幕が、なぜ彼女を目覚めさせたのか。」
「そして……なぜ魔王と呼ばれる存在が、記憶を失っているのか。」
その疑問に答えは出ない。
やがて一行は王城へ到着する。
大きな扉の前で、兵士が頭を下げた。
「陛下がお待ちです。」
レオンは頷く。
「行きましょう。」
柚たちは顔を見合わせる。
そして、新たな仲間となったシロと共に、王城の中へ足を踏み入れた。




