第四十四話 仲間
黒い霧が消えると、森は静寂に包まれた。
誰もすぐには口を開けない。
レオンが剣を鞘へ収める。
「どうやら、本当に終わったようですね。」
騎士たちも安堵したように息を吐いた。
ルークは黒い結晶の欠片を拾い上げる。
「魔力は完全に消えています。」
「もう魔獣が現れることはないでしょう。」
その言葉を聞き、皆の表情が少しだけ和らいだ。
一方、銀髪の少女は不安そうに辺りを見回していた。
「……。」
居場所が分からない。
そんな表情だった。
柚は少女の前に立つ。
「名前は?」
少女は少し考えたあと、小さく首を横に振った。
「分からない。」
「何も思い出せない。」
「そっか。」
柚は困ったように笑う。
「じゃあ名前がないと不便だね。」
レオンも頷く。
「このままでは呼ぶこともできません。」
柚は少女の顔をじっと見る。
銀色の長い髪が風に揺れていた。
「……シロ。」
少女が首をかしげる。
「シロ?」
「髪、白いし。」
暁が小さく笑う。
「柚らしい。」
「分かりやすいでしょ。」
少女は何度かその名前を口にした。
「シロ……。」
「シロ。」
やがて、ふわりと笑顔になる。
「その名前、好き。」
柚も笑顔で頷いた。
「今日からシロね。」
「うん!」
その笑顔を見て、レオンは少し驚く。
先ほどまで魔王と呼ばれていた少女とは思えないほど、無邪気だった。
ルークは静かに口を開く。
「問題は、この子をどうするかです。」
その一言で空気が引き締まる。
騎士たちも顔を見合わせた。
「古文書では魔王とされています。」
「王都へ連れて行くべきでは……。」
「ですが、危険かもしれません。」
意見が分かれる。
その時。
柚がシロの前へ立った。
「シロは私たちが守る。」
暁も隣へ並ぶ。
「今のシロに敵意はない。」
レオンは少し考え込み、やがて頷いた。
「私も同じ考えです。」
「少なくとも、彼女を罪人のように扱う理由はありません。」
ルークも小さく息を吐いた。
「……分かりました。」
「ですが、王都では必ず事情を説明しましょう。」
「それでいい?」
柚がシロを見る。
シロは少しだけ不安そうな顔をしたあと、柚の袖をそっと掴んだ。
「……うん。」
「一緒に行く。」
柚は笑って頷く。
「決まり。」
こうして一行は、新たな仲間となった少女――シロとともに、王都への帰路につくのだった。




