第四十三話 黒幕の声
カタ……。
砕け散った黒い結晶の欠片が、小さく震え始めた。
「まだ動く……!」
レオンが剣を構える。
ルークも欠片を見つめた。
「おかしい……。」
「魔力は消えたはずです。」
すると、一つの欠片から黒い霧が立ち上った。
霧は人の形になり、ゆっくりと空中へ浮かぶ。
「これは……。」
ルークが息をのむ。
「魔法で残された念話です。」
「本人ではありません。」
黒い人影が静かに口を開く。
『ここまで来たか。』
低い声が森に響く。
騎士たちは身構えた。
『だが、それも想定のうち。』
『結晶が壊れても計画は終わらない。』
柚が眉をひそめる。
「誰?」
黒い人影は答えない。
代わりに銀髪の少女へ視線を向けた。
『ようやく目覚めたな。』
『魔王よ。』
少女は小さく首を振る。
「私は……。」
「魔王なんかじゃない。」
『思い出せ。』
『お前の力は、この世界を滅ぼすためにある。』
「違う!」
少女は耳を塞び、苦しそうにしゃがみ込んだ。
柚はすぐに少女の前へ立つ。
「やめろ!」
その声に、人影は初めて柚を見る。
『異世界の者か。』
『計画の邪魔をするなら、お前たちから始末する。』
暁も一歩前へ出た。
「来るなら来い。」
黒い人影は小さく笑う。
『その時を楽しみにしている。』
次の瞬間、黒い霧は音もなく消え去った。
森に静寂が戻る。
ルークは欠片を拾い上げ、険しい表情で呟く。
「やはり……。」
「誰かが意図的に魔王を目覚めさせようとしていたのですね。」
柚は少女を見る。
少女はまだ不安そうに震えていた。
「大丈夫。」
「もう一人じゃないから。」
少女はゆっくりと顔を上げ、小さく頷いた。




