第三十八話 二対二
「……もう一匹?」
黒い霧が晴れる。
そこに現れたのは、先ほどと同じ姿をした黒い魔獣だった。
「ガアアアアッ!」
二体の咆哮が重なる。
レオンの表情が強張る。
「同じ魔獣を……生み出したのか。」
ルークも黒い結晶を見つめたまま呟く。
「やはり、あの結晶が原因です。」
「壊さない限り、何度でも生み出せるのかもしれません。」
騎士たちは剣を構える。
「レオン様!」
「我々も戦います!」
しかし、レオンは首を横に振った。
「駄目です。」
「あの魔獣は危険すぎます。」
「皆さんはルーク殿を守ってください。」
「はっ!」
騎士たちはすぐにルークの周囲を固めた。
その様子を見た柚は笑う。
「二体ならちょうどいいね。」
暁も頷く。
「一人一体。」
「競争する?」
柚が悪戯っぽく笑う。
「どっちが先に倒せるか。」
暁は少し考え、小さく笑った。
「負けない。」
「決まり!」
その瞬間。
二人は同時に地面を蹴った。
ドンッ!!
柚は右の魔獣へ。
暁は左の魔獣へ。
互いに迷いなく飛び込んでいく。
「ガアアッ!」
柚へ飛びかかった魔獣が爪を振り下ろす。
柚は紙一重でかわし、その腕を掴んだ。
「重い!」
そのまま腰を落とす。
「でも!」
勢いよく身体をひねる。
ドガァァン!!
巨大な魔獣が宙を舞い、地面へ叩きつけられた。
一方。
暁の前では、もう一体の魔獣が連続で爪を振るっていた。
しかし暁は最小限の動きで攻撃を避け続ける。
「遅い。」
懐へ潜り込む。
拳を握る。
ドゴッ!!
腹へ一撃。
続けて膝蹴り。
魔獣は苦しそうに大きくよろめいた。
「二人とも……。」
レオンは思わず苦笑する。
「本当に楽しそうですね。」
だが、その直後だった。
ゴォォォォ……。
黒い結晶が今まで以上に強く輝き始める。
ルークの表情が変わる。
「まずい!」
「今度は結晶そのものが……!」
黒い結晶の表面に、無数の赤い紋様が浮かび上がる。
森全体が激しく揺れ始めた。
「まだ何か来る……!」
ルークの言葉と同時に、結晶の内部から何かがゆっくりと動き始めた。




