第三十七話 本気
「じゃあ。」
「本気でいこう。」
柚が笑う。
暁も静かに頷いた。
レオンは思わず聞き返す。
「……今までは本気ではなかったのですか?」
「うん。」
柚はあっさり答える。
「怪我させないようにしてたし。」
その一言に、レオンたちは言葉を失う。
ワイバーンも、高ランク魔獣も、この二人にとっては手加減の相手だった。
「ガアアアアアッ!!」
巨大化した魔獣が再び突進する。
今度は柚が前へ出た。
「暁!」
「ああ。」
二人は同時に地面を蹴る。
ドンッ!!
黒い魔獣の左右へ一瞬で回り込む。
「こっち!」
柚の拳が脇腹へ突き刺さる。
ドゴォッ!!
魔獣の身体が大きく傾く。
その瞬間。
「終わり。」
反対側から暁の回し蹴りが炸裂した。
ドガァァン!!
左右から衝撃を受けた魔獣は大きく吹き飛び、黒い結晶へ激突する。
轟音が森に響いた。
「今だ!」
ルークが叫ぶ。
柚は頷き、再び結晶へ駆け出した。
「今度こそ!」
思い切り拳を振り抜く。
ドォォォン!!
さっきとは比べものにならない衝撃が結晶を襲う。
ピキッ。
小さな音が響いた。
「ひびが!」
レオンが叫ぶ。
黒い結晶の表面に一本の亀裂が走る。
しかし。
パキン。
そこで止まった。
「まだ壊れない!」
柚は悔しそうに舌打ちする。
その時だった。
黒い結晶が再び妖しく光り始める。
「また来ます!」
ルークの声と同時に、結晶から黒い霧が噴き出した。
だが今度は魔獣ではない。
霧は空中で渦を巻き、もう一つの影を形作り始める。
「……もう一匹?」
レオンの表情が凍り付く。
黒い霧の中から、新たな巨大な魔獣がゆっくりと姿を現した。
柚は新しい魔獣を見て、口元を緩める。
「増えた。」
暁も構えを取り直す。
「少し忙しくなるな。」




