第三十六話 役割分担
「先に、あれを壊そう。」
柚の言葉に、暁も頷く。
「俺が魔獣を引きつける。」
「柚が結晶を。」
「了解。」
二人は迷いなく動き出した。
黒い魔獣は結晶へ向かう柚に気付く。
「ガアアアッ!」
進路を塞ぐように飛び出した。
しかし。
「こっち。」
暁が一歩前へ出る。
魔獣の拳ほどもある前脚が振り下ろされる。
ドォン!!
地面が砕ける。
だが、その一撃は空を切った。
暁はすでに魔獣の横へ回り込んでいた。
「遅い。」
ドゴッ!!
拳が脇腹へめり込む。
魔獣の巨体がわずかによろめく。
「ガアアッ!」
怒った魔獣は標的を暁へ変えた。
「それでいい。」
暁は魔獣を誘うように走り出す。
その隙に、柚は黒い結晶の前へたどり着いた。
「これを壊せばいいんだね。」
結晶を見上げる。
近くで見ると、不気味な黒い光が脈打っていた。
「硬そう。」
柚は拳を握る。
「でも。」
「壊せないものじゃない。」
大きく踏み込む。
「せーのっ!」
ドゴォォォン!!
拳が結晶へ直撃した。
しかし。
結晶はびくともしない。
「え?」
柚は目を丸くする。
「壊れない。」
ルークも驚きを隠せなかった。
「あれほどの一撃で……。」
黒い結晶は傷一つ付いていない。
その瞬間。
ゴォォォォ……。
結晶が赤黒く光り始める。
「まずい!」
ルークが叫ぶ。
次の瞬間。
結晶から黒い光が溢れ、魔獣の身体を包み込んだ。
「ガアアアアアッ!!」
魔獣が苦しむように咆哮する。
すると、その身体は一回り大きく膨れ上がった。
爪はさらに鋭くなり、全身から黒い霧が噴き出している。
レオンの顔から血の気が引く。
「強く……なった?」
ルークは険しい表情で結晶を見つめる。
「あの結晶が魔力を送り続けています!」
「このままでは、何度でも力を与えられてしまいます!」
暁は巨大化した魔獣を見上げ、小さく息を吐いた。
「なるほど。」
柚も苦笑する。
「普通に殴るだけじゃ駄目ってことか。」
二人は再び視線を合わせる。
そして同時に笑った。
「じゃあ。」
「本気でいこう。」




