第三十五話 黒き魔獣
「ガアアアアアアッ!!」
黒い魔獣の咆哮が森中に響き渡る。
衝撃で木の葉が一斉に舞い上がった。
騎士たちは思わず後ずさる。
「すごい威圧感だ……。」
レオンも剣を構えたまま、魔獣から目を離さない。
「今までの魔獣とは明らかに違います。」
ルークは黒い結晶と魔獣を交互に見つめる。
「あの結晶から生まれたのなら……。」
「倒すだけでは終わらないかもしれません。」
その時。
黒い魔獣が地面を蹴った。
ドォンッ!!
巨体とは思えない速さで柚へ突っ込んでくる。
「速っ!」
柚は咄嗟に腕を交差させた。
ドガァァン!!
激しい衝撃とともに、柚の身体が後ろへ吹き飛ぶ。
「柚!」
暁が駆け寄る。
柚は地面を滑りながらも踏ん張り、止まった。
「いてて……。」
腕を軽く振る。
「初めてまともに吹っ飛ばされた。」
暁の表情が少しだけ変わる。
「大丈夫か。」
「うん。」
柚は笑って立ち上がる。
「ちょっとびっくりしただけ。」
黒い魔獣は再び低く唸る。
「グルルル……。」
今度は暁へ向かって跳びかかった。
暁は横へ避ける。
しかし。
ブォンッ!!
魔獣の尻尾が横薙ぎに迫る。
「……っ。」
ドンッ!!
暁は腕で受け止めたものの、そのまま数メートル後ろへ押し戻された。
レオンが目を見開く。
「暁さんまで……!」
今まで敵の攻撃で押し込まれることすらなかった二人。
その光景に騎士たちは息をのんだ。
暁は腕を軽く動かす。
「重い。」
柚が笑う。
「やっと強い相手だ。」
「楽しくなってきた。」
レオンは思わず頭を抱えた。
「普通なら逃げる場面なのですが……。」
ルークは苦笑しながらも、黒い結晶を見つめ続けていた。
「やはり……。」
「力の源は、あの結晶です。」
「結晶を何とかしなければ、この魔獣は倒せないかもしれません。」
柚と暁は同時に黒い結晶へ視線を向ける。
そして、小さく頷き合った。
二人とも同じことを考えていた。
「先に、あれを壊そう。」




