第三十四話 魔力の正体
ルークを先頭に、一行は森の奥へ進んでいく。
歩けば歩くほど、森は静まり返っていた。
鳥の鳴き声も聞こえない。
風さえ止まったような不気味な空気が漂っている。
「静かだね。」
柚が辺りを見回す。
「静かすぎる。」
暁も小さく頷いた。
レオンは剣の柄へ手を添える。
「嫌な予感がします。」
ルークは真剣な表情のまま歩き続けた。
「もう近いです。」
その言葉から数分後。
木々が途切れ、小さな広場へ出た。
広場の中央には、巨大な黒い結晶が地面から突き出している。
高さは三メートルほど。
禍々しい黒い霧をまとい、不気味な光を放っていた。
「……あれ。」
柚が目を丸くする。
「石?」
ルークは首を横へ振った。
「違います。」
「魔力結晶です。」
「魔力結晶?」
「大量の魔力が長い年月をかけて固まったものです。」
ルークの表情が険しくなる。
「ですが……。」
「こんな色の魔力結晶は見たことがありません。」
レオンも息をのむ。
「これが魔獣を凶暴化させているのですか。」
「恐らく。」
ルークが答えた、その時だった。
ゴォォォォ……。
黒い結晶から霧が溢れ出す。
それは渦を巻きながら、一か所へ集まり始めた。
「下がってください!」
ルークが叫ぶ。
騎士たちは慌てて距離を取る。
黒い霧は少しずつ形を作っていく。
やがて。
四本足の巨大な獣が姿を現した。
全身を黒い毛で覆われ、真紅の瞳が妖しく光る。
体長はワイバーンを超えるほど大きい。
「グルルルル……。」
低い唸り声が森へ響いた。
レオンの表情が変わる。
「こんな魔獣……図鑑でも見たことがない。」
ルークは額に汗を浮かべる。
「結晶が魔力で作り出した魔獣……。」
「そんなことが本当に……。」
柚は拳を握り、笑みを浮かべた。
「やっとボスっぽいのが出てきたね。」
暁も静かに一歩前へ出る。
「今回は少し強そう。」
黒い魔獣は二人を睨みつけると、大きく咆哮した。
「ガアアアアアアッ!!」
その咆哮だけで周囲の木々が大きく揺れた。




