第三十一話 最初の目的地
翌朝。
王城の正門前には、一台の馬車が用意されていた。
御者のほかに、護衛の騎士が数名控えている。
「準備はできています。」
レオンが二人に声をかけた。
柚は大きく伸びをする。
「よし!」
「今度は何を倒しに行くの?」
レオンは苦笑した。
「まずは倒しに行くわけではありません。」
「調査です。」
「調査?」
暁が尋ねる。
レオンは地図を広げた。
「最初の目的地は、このエルムの森です。」
地図には、王都から少し離れた場所に広大な森が描かれていた。
「この森では最近、魔獣の数が急激に増えています。」
「さらに、本来なら森の奥で暮らす魔獣まで人里近くへ現れるようになりました。」
ルークも地図を覗き込む。
「私も以前、この森を調べました。」
「ですが、その時は異常はありませんでした。」
「つまり、ここ数か月で何かが変わったということですね。」
レオンが頷く。
「はい。」
「まずは原因を探ります。」
柚は地図を見つめる。
「歩くの?」
「馬車で森の入口まで向かいます。」
「よかった。」
「歩きだったら疲れる。」
暁が小さく笑う。
「戦う前に疲れるな。」
「それは嫌。」
二人のやり取りに、レオンとルークも思わず笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
馬車は王都を出発し、街道を進んでいく。
昼を過ぎた頃。
レオンが窓の外を見ながら呟いた。
「もうすぐです。」
しばらくすると、遠くに深い森が見えてきた。
木々は空を覆うほど高く、昼間にもかかわらず森の中は薄暗い。
「なんか不気味。」
柚が森を見つめる。
「魔獣がいそう。」
「いる。」
暁が短く答えた。
「気配がする。」
その言葉に、レオンとルークの表情が引き締まる。
馬車が森の入口で止まった。
「ここから先は徒歩です。」
全員が馬車を降りる。
森へ一歩足を踏み入れた、その時。
ガサッ。
近くの茂みが揺れた。
騎士たちが一斉に剣を抜く。
「何かいます!」
しかし、飛び出してきたのは小さな魔獣だった。
緑色の体に、大きな耳。
体長は一メートルほど。
「ゴブリン?」
柚が首をかしげる。
レオンは首を横に振った。
「違います。」
「ホーンラビットです。」
「普段は臆病な魔獣ですが……。」
ホーンラビットは赤い目で柚たちを睨みつけると、鋭い角を向けて一直線に突進してきた。
「普通じゃない……!」
レオンが叫ぶ。
柚は一歩前へ出て、小さく息を吐いた。
「まずは一匹。」




