第二十六話 なぜ知っている
「異世界から来たお二人に。」
その言葉に、その場の空気が一変した。
レオンは剣を抜き、ルークへ向ける。
「……今、何と言った。」
ルークは動じることなく答えた。
「異世界から来た、と申し上げました。」
「なぜ、そう思った。」
レオンの問いに、ルークは柚と暁へ視線を向ける。
「まず、その装いです。」
「この世界では見たことがありません。」
柚は自分の服を見下ろした。
「やっぱり珍しいんだ。」
「ええ。」
ルークは頷く。
「ですが、それだけではありません。」
「お二人からは、この世界の人とは少し違う気配を感じます。」
「気配?」
柚が首をかしげる。
「私たち、そんなに違う?」
「言葉で説明するのは難しいですが……。」
「長年、異世界に関する文献を調べてきた私だからこそ分かる感覚です。」
暁が一歩前へ出る。
「異世界から来た人間を見たことがあるのか。」
「いいえ。」
ルークは静かに首を横へ振った。
「直接お会いしたことはありません。」
「ですが、古い文献には記録が残っています。」
「数百年に一度、異世界から人が現れることがある、と。」
レオンは目を見開いた。
「そんな記録が……。」
「はい。」
ルークは続ける。
「私は、その文献を調べ続けていました。」
「そして、お二人の噂を耳にしたのです。」
「素手でワイバーンを倒した、見たことのない装いをした赤髪の少女と黒髪の少年がいる、と。」
「その話を聞いた瞬間、文献に記されていた異世界人ではないかと思いました。」
柚は暁を見る。
「有名になっちゃったね。」
「仕方ない。」
暁は苦笑した。
柚はルークへ向き直る。
「じゃあさ。」
「帰る方法も知ってる?」
ルークの表情が少し曇る。
「申し訳ありません。」
「今すぐ帰る方法までは分かりません。」
柚は少し肩を落とした。
「そっか。」
「ですが。」
ルークは真っ直ぐ二人を見つめる。
「王都の大図書館なら、何か手掛かりが見つかるかもしれません。」
「世界中の文献が集められている場所です。」
「異世界について書かれた本も残っている可能性があります。」
柚の表情が明るくなる。
「じゃあ王様に会った後、行ってみよう!」
「賛成。」
暁も頷いた。
ルークは安心したように微笑む。
「実は私も王都へ向かう途中なのです。」
「もしご迷惑でなければ、ご一緒してもよろしいでしょうか。」
レオンはしばらくルークを見つめていた。
敵意は感じない。
それどころか、異世界について知る数少ない人物かもしれない。
「……分かりました。」
「ですが、不審な行動をすれば、その時は容赦しません。」
「承知しております。」
ルークは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
その夜は、それ以上何事もなく更けていった。
しかし皆が眠りについた頃。
焚き火の残り火を見つめながら、ルークは誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「……女神様。」
「ようやく、お二人を見つけました。」




