第二十三話 盗賊
馬車が出発して半日。
街道は緑豊かな平原へと続いていた。
柚は窓から外を眺める。
「平和だね。」
「そうだな。」
暁も静かに頷く。
レオンは苦笑した。
「その言葉は、この街道ではあまり当てはまりません。」
「え?」
「盗賊が出ることがあります。」
「へぇ。」
柚は少し嬉しそうに笑う。
「喧嘩できる?」
「喜ぶところではありません。」
レオンは額に手を当てた。
その時だった。
「止まれぇぇぇ!!」
前方から怒鳴り声が響く。
馬車が急停止する。
ガタンッ!
柚は窓から顔を出した。
街道の真ん中に、十人ほどの男たちが立っている。
全員が剣や斧を持ち、顔を布で隠していた。
「やっぱりいた。」
暁が小さく呟く。
盗賊の一人が前へ出る。
「命が惜しけりゃ、金目の物を全部置いていけ!」
レオンは静かに馬車を降りた。
「王都騎士団だ。」
「今すぐ武器を捨てて投降しろ。」
盗賊たちは顔を見合わせる。
そして――。
「王都騎士団だろうが関係ねぇ!」
「やっちまえ!」
一斉に襲いかかってきた。
レオンは剣へ手をかける。
しかし、その前に。
「行ってくる。」
柚が馬車から飛び降りた。
「えっ!」
レオンが止める間もない。
盗賊の一人が剣を振り下ろす。
「死ねぇ!」
柚は身体を少し横へずらして避ける。
「遅い。」
ドゴッ!!
拳が男の腹へめり込む。
「がはっ!」
男は数メートル吹き飛び、そのまま気を失った。
「なっ!?」
盗賊たちが目を見開く。
「一人やられただけだ!」
「囲め!」
男たちは一斉に柚を囲む。
柚は楽しそうに笑った。
「今度は十人。」
「さっきより少ないね。」
暁も馬車から降りる。
「終わらせる。」
「うん。」
二人は背中合わせに立った。
盗賊たちはまだ知らない。
目の前にいるのが、ゴブリンキングやワイバーンを素手で倒した二人だということを。




