第二十二話 国王からの招待
「国王?」
柚はきょとんとした。
「この国で一番偉い人?」
アルベルトが頷く。
「はい。この国を治めておられるお方です。」
「へぇ。」
柚は暁を見る。
「どうする?」
「断れるの?」
暁がレオンへ尋ねる。
レオンは少し考え、正直に答えた。
「招待ですので、強制ではありません。」
「ですが……。」
「国王陛下自らお会いしたいと仰るのは、極めて異例です。」
アルベルトも口を開く。
「恐らく、ワイバーン討伐の件を直接お聞きになりたいのでしょう。」
柚は腕を組んだ。
「うーん。」
「行く?」
「俺は柚に合わせる。」
「じゃあ行こっか。」
あっさりと決まった。
レオンは少し拍子抜けしたように目を瞬かせる。
「……もっと悩まれるかと思いました。」
「悩む?」
柚は不思議そうな顔をする。
「会いたいって言われたんでしょ?」
「じゃあ会えばいいじゃん。」
その返答に、レオンは思わず笑みをこぼした。
「承知しました。」
「では、明日の朝に出発いたします。」
「王都までは馬車で三日ほどです。」
「三日!」
柚は目を丸くする。
「遠いんだ。」
「この辺境から王都までは、それなりに距離があります。」
レオンが説明すると、アルベルトも頷いた。
「旅に必要なものはこちらで用意しておきます。」
「ありがとうございます!」
柚は素直に頭を下げた。
◇ ◇ ◇
翌朝。
城の正門には、大きな馬車が停まっていた。
「それじゃあ、行ってきます。」
柚が笑顔で手を振る。
アルベルトは穏やかに微笑んだ。
「お気を付けて。」
「困ったことがあれば、いつでも戻ってきてください。」
「うん!」
リリアも駆け寄ってくる。
「柚さん!」
「暁さん!」
「また遊びに来てくださいね!」
柚は笑って頷いた。
「もちろん!」
暁も優しく微笑む。
「約束する。」
二人は馬車へ乗り込んだ。
レオンも向かいの席へ腰を下ろす。
御者が手綱を引くと、馬車はゆっくりと動き始めた。
窓から見える城が少しずつ遠ざかっていく。
柚は外を眺めながら呟いた。
「異世界に来てまだ数日なのに。」
「もう王様に会うんだ。」
暁は静かに答える。
「柚が暴れるから。」
「私?」
「そう。」
柚は少し考えたあと、小さく笑った。
「否定できない。」
そのやり取りを聞いたレオンは、思わず吹き出した。
王都では、この二人を待ち受ける人物がいる。
国王は何を思い、二人を呼んだのか。
その答えは、まだ誰も知らなかった。




