第十七話 ワイバーン襲来
「西の森で高ランク魔獣だと?」
ガレスが立ち上がる。
兵士は息を整えながら頷いた。
「目撃した冒険者の報告では、空を飛ぶ大型の魔獣です!」
「翼を持ち、火を吐いたと……!」
アルベルトの表情が険しくなる。
「ワイバーンですね。」
ギルド内がざわついた。
「ワイバーンだと!?」
「なんでこんな辺境に……。」
「討伐隊を編成しないと!」
ガレスは素早く指示を飛ばす。
「Aランク以上は準備!」
「騎士団にも伝令じゃ!」
「討伐隊を編成する!」
「はっ!」
冒険者たちが慌ただしく動き始める。
そんな中、柚はアルベルトへ尋ねた。
「ワイバーンって強いの?」
「ゴブリンキングよりも危険です。」
「空を飛び、火炎を吐くため、多くの冒険者が苦戦します。」
「へぇ。」
柚は少し嬉しそうに笑う。
「楽しそう。」
暁は横で小さく息を吐いた。
「ほどほどに。」
「分かってる。」
そう返事をしながらも、柚の表情は隠しきれないほど楽しそうだった。
ガレスが二人へ歩み寄る。
「本来なら登録したばかりのお前さんたちを連れて行くつもりはない。」
「じゃが、お前さんたちの力は見せてもらった。」
「力を貸してくれんか。」
「もちろん。」
柚は即答した。
暁も頷く。
「行きます。」
アルベルトも二人を見る。
「決して無茶だけはしないでください。」
「うん。」
柚は笑顔で返事をした。
「死なない程度に。」
「その基準が一番心配なんじゃが……。」
ガレスは頭を抱え、周囲の冒険者たちから苦笑が漏れる。
ほどなくして討伐隊は出発した。
騎士団と冒険者、およそ五十名。
その最後尾を、柚と暁が並んで歩く。
「空飛ぶ相手か。」
柚は空を見上げた。
「殴れるかな。」
「飛んでる間は無理。」
暁が冷静に答える。
「降りてくるまで待つ。」
「そっか。」
柚は素直に頷いた。
そのやり取りを聞いていた近くの冒険者が思わず吹き出す。
「普通は『逃げる』か『どう倒す』かを考えるんだがな……。」
「この二人は『殴れるか』なんだな。」
誰もが苦笑する中、討伐隊は西の森へ到着した。
しかし――。
「遅かったか……。」
アルベルトが険しい表情で呟く。
森の一角は焼け焦げ、木々はなぎ倒されていた。
そして。
「ギャオオオオオッ!!」
空から巨大な咆哮が響く。
全員が一斉に見上げる。
大きな翼を広げた魔獣が、ゆっくりと旋回していた。
「いた。」
柚は口元を上げる。
「でっかい。」
ワイバーンも地上の人間たちを見つける。
赤い瞳が、まっすぐ柚たちを捉えた。
次の瞬間。
大きく翼を羽ばたかせながら、一気に急降下を始めた。




