第十四話 初めてのレベルアップ
ゴブリンキングが倒れた瞬間。
柚と暁の足元が淡く光り始めた。
「え?」
柚が思わず足元を見る。
光はゆっくりと広がり、二人の身体を包み込んでいく。
「なんだこれ。」
暁も静かに周囲を見回した。
アルベルトは目を見開く。
「その光は……。」
数秒後。
光は何事もなかったかのように消えていった。
柚は自分の手を開いたり閉じたりする。
「消えた。」
「今の何?」
アルベルトは穏やかに頷いた。
「お二人とも、レベルが上がったようです。」
「レベルアップ?」
柚が首をかしげる。
「ゲームみたい。」
「魔物を倒して経験を積むと、一定の経験値でレベルが上がります。」
「先ほどの光は、その証です。」
柚は少し考え込む。
「あれ?」
「ゴブリンキングを倒したの私だよね?」
「なんで暁も光ったの?」
アルベルトは微笑んだ。
「この世界では、同じ戦闘に参加した仲間にも経験が分配されます。」
「討伐した者が最も多く経験を得ますが、共に戦った仲間も経験を積める仕組みなのです。」
「へぇ。」
柚は納得したように頷いた。
「だから二人ともレベルアップしたんだ。」
暁も小さく頷く。
「合理的。」
アルベルトは続けた。
「レベルが上がると身体能力が少しずつ向上します。」
「そして、人によっては新たな能力に目覚めることがあります。」
「新しい能力?」
「はい。」
「スキルと呼ばれる特別な力です。」
柚は少し目を輝かせた。
「スキルかぁ。」
「なんかワクワクする。」
「ですが、すぐに目覚めるとは限りません。」
アルベルトは説明を続ける。
「何度もレベルを上げて突然発現する者もいれば、一生目覚めない者もいます。」
「そうなんだ。」
柚は両腕を伸ばして軽く背伸びをした。
「今は特に変わった感じもしないし、その時になったら考えよ。」
暁も自分の拳を握ってみる。
「俺も変化は感じない。」
アルベルトは倒れているゴブリンキングへ目を向けた。
「それより、この討伐を早く報告しましょう。」
「ゴブリンキングの討伐は、この辺境では滅多にありません。」
「ギルドマスターも驚かれるはずです。」
「じゃあ帰ろ!」
柚は笑顔で歩き出す。
暁とアルベルトも後に続いた。
森を抜け、街道へ出る。
町の門が見えると、門番が三人に気付き駆け寄ってきた。
「アルベルト様!」
「ご無事でしたか!」
アルベルトは頷く。
「ええ。」
「依頼は無事に達成しました。」
門番は安堵したように息を吐く。
「それは何よりです。」
アルベルトは続けた。
「それと、ゴブリンキングも討伐しました。」
「……え?」
門番の表情が固まる。
「ゴブリンキング……ですか?」
「はい。」
「こちらのお二人が討伐してくださいました。」
門番は柚と暁を何度も見比べた。
「ご冗談を……。」
アルベルトは静かに首を横へ振る。
「冗談ではありません。」
「ギルドへ向かえば分かります。」
門番は言葉を失う。
柚は暁へ小声で話しかけた。
「また驚かれた。」
暁は小さく笑う。
「もう慣れた。」
そんな二人を見て、アルベルトは思わず苦笑した。
ギルドへ戻れば、また一騒動起きる。
そんな予感しかしなかった。




