第十話 初依頼
「では、こちらがお二人のギルドカードです。」
受付嬢から渡されたのは、手のひらほどの大きさの金属製のカードだった。
表には名前と『S』の文字。
裏にはギルドの紋章が刻まれている。
「これが身分証にもなります。」
「失くさないよう、お気を付けください。」
柚はカードを裏返したり光にかざしたりして眺める。
「かっこいい。」
「財布ないけど。」
「制服のポケットでいい。」
暁はそう言って学ランの内ポケットへカードをしまった。
柚もスカートのポケットへ入れる。
「これでよし。」
ガレスは二人を見ながら口を開く。
「登録も終わったことじゃ。」
「せっかくだ。一つ依頼でも受けてみるか?」
「依頼?」
柚の目が輝く。
「お金ももらえる?」
「ああ。」
「依頼を達成すれば報酬が出る。」
「やる!」
返事は一瞬だった。
暁は苦笑する。
「即決。」
「だって働いたらご飯食べられるじゃん。」
「確かに。」
ガレスは受付嬢へ声を掛ける。
「今受けられる依頼を持ってきてくれ。」
「はい。」
しばらくして受付嬢が数枚の依頼書を持って戻ってきた。
「薬草採取。」
「荷物運び。」
「ゴブリン討伐。」
柚は一枚ずつ眺める。
「薬草……。」
「絶対分かんない。」
「荷物運び……。」
「力仕事ならできそう。」
そして最後の一枚を見た。
「ゴブリン討伐。」
「これ。」
暁も依頼書をのぞき込む。
「魔獣?」
アルベルトが説明する。
「ゴブリンは魔獣ではなく魔物です。」
「群れで行動し、人を襲うことがあります。」
柚は依頼書を受付へ返した。
「じゃあこれ。」
受付嬢は驚いた表情を浮かべる。
「Sランクの方なら問題ないとは思いますが……。」
「ですが、初依頼ですので本来は――」
ガレスが笑って遮る。
「心配するな。」
「この二人なら、ゴブリン程度で苦戦はせん。」
柚は首をかしげた。
「ゴブリンって強いの?」
「弱い。」
ガレスは即答した。
「初心者が最初に戦う相手じゃ。」
「じゃあ余裕だね。」
暁も頷く。
「すぐ終わる。」
ガレスは少し真面目な表情になる。
「ただし。」
「この世界では、油断した者から死ぬ。」
「どんな相手でも気を抜くな。」
その言葉に、二人は素直に頷いた。
「分かった。」
「はい。」
ガレスは満足そうに笑う。
「よし。」
「では、お前さんたちの初依頼じゃ。」
「景気よく行ってこい!」
柚は笑顔で拳を突き上げた。
「行ってきます!」
こうして、異世界へ来て初めての依頼が始まった。
だが、この時の二人はまだ知らない。
その依頼が、ギルド中を再び騒がせることになるとは。




