白薔薇の庭に、茨は猛る
オルブライト伯爵邸の広大な庭園には、見事な白薔薇の生け垣が連なっている。
二十二歳になる新米庭師のテオは、朝露に濡れる大輪の薔薇に鋏を入れながら、ふと、二階の窓辺へと視線を吸い寄せられていた。
そこには、陽光を浴びて佇む一人の少女の姿があった。
メリッサ・オルブライト伯爵令嬢。帝国一の美女と称され、誰もがその可憐さと儚げな風情に溜息を漏らす、深窓の令嬢であった。
(……なんて、美しいお方なんだ)
テオの胸の奥に、同じ年頃の男子として極めて自然な、甘酸っぱい感情が芽生えるのは理の当然であった。届かぬ星を仰ぎ見るような、淡く密やかな恋心。
しかし、テオは即座にその不埒な熱を冷ますべく、全力で鋏を動かして手元を律した。
絶対に、この感情を表に出してはならない。視線一つ、溜息一つ溢しても命はない。
何故なら、このオルブライト家には「あの男たち」───世間から『茨』と恐れられる、常軌を逸した身内たちが血眼で控えているからだ。
「これこれ、テオ」
すぐ傍らで、同じく薔薇の手入れをしていた現役の老庭師である祖父マティアスが、いつものように穏やかな笑みを浮かべ、のんびりとした声を寄せてきた。
「あのお方をあまり見つめてはダメだよ。このお家に仕える者はね、恋をする前にまず、己の命がいくつあるかを数えねばならんのだから」
祖父のあまりにいつも通りの穏やかな口調と、その内容の凶悪な乖離に、テオの背筋を凍るような戦慄が駆け抜けた。
慌てて周囲を見回すが、幸いにして、今は庭園の物陰に人影はない。
だが、油断は破滅を意味する。国家最高峰の武力と権力を持つ男たちが、いつどこから、どのような大真面目な顔をして現れるか、分かったものではなかった。
「マティアス、テオ。おはよう。今日も良いお天気ね」
鈴を転がすような愛らしい声が静かな庭園に響き、テオは弾かれたように姿勢を正した。振り返れば、邸内での天真爛漫な姿そのままに、メリッサが可憐な笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってくる。世間が知る儚げな深窓の令嬢とは少し違う、年相応に瑞々しく、気さくなお嬢様の姿がそこにはあった。
「お嬢様、おはようございます。本日も薔薇の調子は万全でございます」
マティアスがいつものように目尻を下げて好々爺の笑みを浮かべる。
メリッサはテオの手元にある大輪の白薔薇を覗き込み、瞳を輝かせた。
「まあ、本当に綺麗ね! ご苦労様、テオ。いつもお庭をこんなに美しく整えてくれて、本当にありがとう」
至近距離で向けられた、一点の曇りもない極上の微笑み。そして、労いの言葉。二十二歳の若者にとって、それはあまりに過酷な毒を秘めた甘露であった。
(……あ、駄目だ。心臓が、破裂する)
テオの胸の奥で、甘酸っぱい感情が爆発寸前の音を立てる。お嬢様のあまりの愛らしさに、ほんの一瞬だけ、己の立場を忘れて見惚れそうになった───その刹那であった。
「───ほう」
地平の彼方から響く地鳴りのような、低く重厚な声が、庭園の空気を一瞬にして凍らせた。
テオとマティアスは弾かれたように姿勢を正し、深く深く頭を垂れた。
「大旦那様、おはようございます」
現れたのは、現帝国軍の頂点に君臨する、大将軍ガルフォードであった。その巨躯から放たれる圧倒的な威風は、ただそこに佇むだけで周囲の木々さえ平伏させるかのようである。
ガルフォードは、厳粛な面持ちのまま、まずは手入れされた白薔薇へと視線を落とした。
「まことに。見事な薔薇だ」
その声は、戦場を統べる総大将に相応しい、冷徹な響きを帯びていた。
大将軍の視線が、薔薇から現役の老庭師であるマティアスへと移動する。長年オルブライト家に仕える忠臣への、労いを込めた視線。
しかし、その鋭い眼光が、最後に新米庭師のテオへと移った瞬間、空気の重圧が数十倍へと跳ね上がった。
(ひっ……!?)
大将軍ガルフォードの切れ長の目が、冷徹な暗殺兵器のように細められる。それは、国家反逆の徒を今まさに処刑せんとする、凄まじいまでの殺気であった。ほんの一瞬、己の孫娘に不埒なときめきを抱いた若者の動揺を、百戦錬磨の将帥が見逃すはずもなかった。眉間に冷たい剣を突きつけられたかのような恐怖に、テオの背中は一瞬で冷や汗に染まり、本気で命の危機を確信する。
だが、大将軍の視線が、当のメリッサへと移った刹那。
「……とはいえ、薔薇は確かに見事だが、我がメイの愛らしさには到底及ばぬよ。ガハハハ!」
先ほどまでの国家滅亡級の殺気は霧散し、そこにいたのは、ただただ目尻を下げて鼻の下を伸ばした、威厳の欠片もない好々爺であった。
大将軍ガルフォードがメリッサを連れて庭園の奥へと歩みを進めるのを見送り、テオは消え入りそうな吐息を漏らして胸を撫で下ろした。
だが、神の慈悲はここまでであった。
歩き出したメリッサのポケットから、ふわり、と白い絹のハンカチーフが零れ落ち、芝生の上へ着地した。
(あ、お嬢様がハンカチを……)
テオは反射的にそれを拾い上げ、お渡ししようと一歩を踏み出そうとした、刹那である。
「動くな」
低く、硬質な声が鼓膜を打つ。
いつの間にそこに佇んでいたのか。テオの退路を完全に断つ位置に、オルブライト家当主にして現帝国軍を率いる将軍ゲラルトが、鉄壁の如き威容で立ちはだかっていた。その鋭い眼光は、戦場にて敵の伏兵を一網打尽にする際の冷徹そのものであった。
(だ……旦那様……!?)
テオの手が、ハンカチの数センチメートル手前で完全に凍りついた。
将軍ゲラルトの視線が、芝生の上のハンカチと、それを拾おうとするテオの指先を大真面目に往復する。それはあたかも、不発の弩級兵器の信管に触れようとする愚者を凝視するかのようであった。
「……それが我が娘の肌に触れる布地であると理解しての手つきか。貴様に、それを拾い上げる資格と覚悟があるのか、我は問うている」
(ただのハンカチです……! 落ちた布を拾うだけで資格と覚悟を問われるのですか……!?)
テオは声を出すこともできず、ただただ心の中で血の涙を流した。ここで少しでも不審な動きを見せれば、文字通り眉間に冷たい剣を突きつけられ、そのまま冥府へと送られる。新米庭師の直感が、そう大真面目に告げていた。
テオは滝のような冷や汗を流しながら、決死の覚悟で声を絞り出した。
「ほ、ほんの……ほんの、一刹那の猶予を……! 滅相もございません、ただ、汚れぬうちに拾わせていただく許可を……我が命に代えましても、お許しいただきたく……!」
国家の全権を賭けた外交交渉の如き必死の嘆願。それを聞いた将軍ゲラルトは、冷徹な顔のまま、ふっと微かに顎を引いた。
「よかろう。迅速に執り行え。ただし、指先一つ掠めることも許さん」
「は、ははっ……!」
テオは震える指先で、まるで爆薬の根元を切り取るかのような極限の緊張感の中、メリッサのハンカチを命がけでつまみ上げるのであった。
背後から突き刺さる将軍ゲラルトの冷徹な視線に背中を焼かれながら、テオは生まれたての小鹿のように膝を震わせ、メリッサの元へと歩み寄った。
「お、お嬢様……。こちら、落とし物にございます」
極限の緊張のあまり声が裏返りそうになるのを必死に堪え、テオは細心の注意を払ってハンカチを差し出した。指先一つかすめないという約束を遵守するため、布の端の、さらにその数ミリメートル外側を掴むような、職人技じみた手つきであった。
振り返ったメリッサは、テオの手元を見て「まあ!」と嬉しそうに瞳を輝かせた。
「わざわざ届けてくれたのね。ありがとう、テオ!」
メリッサは一切の他意なく、天真爛漫な笑みを浮かべてハンカチを受け取った。その際、彼女の柔らかな指先が、テオの無骨な手にほんの、ほんの微かに掠めた。
(あ───)
それは、絹の布越しですらない、奇跡のような一瞬の接触であった。
メリッサは何事もなかったかのように微笑んでいるが、二十二歳の純情な庭師の脳内には、一瞬にして極彩色の花火が打ち上がった。甘酸っぱい熱が、一気に全身の血流を駆け巡る。
(……温かい。俺、もう今日死んでもいいかもしれない)
あまりの幸福感に、テオの顔が不覚にも緩みそうになった、まさにその刹那であった。
「───ほう」
先ほどの大将軍のものとは異なる、だがそれ以上に若く、鋭利で、圧倒的な質量を孕んだ声が、テオの鼓膜を容赦なく引き裂いた。
庭園の生け垣の陰から、いつの間にか音もなく現れたのは、帝国中の令嬢から絶大な人気を誇る麗しき騎士───近衛騎士隊長シグルドであった。
二十六歳という若さで近衛の頂点に立つその姿は、一幅の絵画の如く洗練されている。一点の曇りもない純白の近衛軍服に身を包み、金糸の刺繍が施された肩章を揺らす佇まいは、非の打ち所のない美しい顔と相まって、神々しいまでの品格を放っていた。そのあまりの美しさに、同性であるテオでさえ思わず息を呑み、言葉を失うほどであった。
しかし、その至高の芸術品のような唇から漏れ出た言葉は、テオの魂を直撃した。
「……今、触れたな」
(ひ、非接触です……! 絹の布の分子すら交わっておらぬほどの距離を維持いたしました……!)
テオは心の中で必死に弁明したが、声にはならなかった。近衛騎士隊長シグルドの、帝国を守護すべき鋭い双眸が、大真面目にテオの右手を凝視している。その眼光は、国家を揺るがす大逆犯を捕縛せんとする冷徹そのものであった。
どれほど外面が神々しく、品格に満ち溢れていようとも、テオには分かっていた。この美しき近衛騎士隊長の頭の中は、今、この瞬間も「最愛の妹をいかにして不埒な輩から守るか」という過保護な妄想で大半が占められているのだ、と。その社会的地位の高さと、脳内の異常なまでの暴走ぶりのズレが、何よりも恐ろしかった。
シグルドはゆっくりと、しかし優雅な足取りでテオとの距離を詰め、腰の長剣の柄に美しく指をかけた。
「我が妹は、庭園の雑草を毟るその手で、安易に触れてよい存在ではない。お前のその右腕は、今後も庭師の職務を全うするために必要なものか、それともここで切り離すべきものか。……よく考えて答えるがよい」
(ハンカチを受け渡ししただけです……! 騎士の誉れ高き剣を、新米庭師の右腕の切断に大真面目な顔で使おうとしないでください……!)
眉間に冷たい剣を突きつけられたかのような、凄絶な威圧感。テオはあまりの恐怖に、己の右手を即座に「土の湿度を測るポーズ」へと偽装し、石の如く硬直するしかなかった。
「まあまあ、皆様。朝からそんなに血気盛んでどうなさったの?」
張り詰めた庭園の空気を一瞬にして弛緩させるような、おっとりとした、どこまでも優しい声が響いた。
オルブライト伯爵夫人、ジゼルであった。重度のロマンス小説愛好家である彼女は、夢見がちな少女のような微笑みを浮かべ、優雅に歩み寄ってくる。
大将軍、将軍、傷だらけの戦場を生き抜いた騎士という国家最高峰の男たちが、その登場に一瞬だけ殺気を収めた。
テオは心の中で「救世主が来られた……!」と涙を流しかけたが、それは大きな誤りであった。ジゼルは頬に手を当て、テオと、先ほどまでメリッサがいた窓辺を交互に見つめると、うっとりとした溜息を溢したのである。
「まあ、テオ。私、気づいてしまいましたわ。…………身分違いの恋、そしてただ遠くから見守るだけの切ない想い。なんてロマンチックなのかしら。まるで悲恋小説の主人公のようですわね。ああ、胸が締め付けられるようだわ………!」
(お……奥様――っ!?)
テオの顔から血の気が完全に引いた。心臓が跳ね上がるどころか、恐怖のあまり一時停止する。
ジゼルに悪気は一切ない。純粋にロマンスを愛するがゆえの無自覚な呟きであった。しかし、その爆弾発言が茨たちの耳に届いた瞬間、庭園の温度が氷点下へと叩き落とされた。
大将軍ガルフォードの目が据わり、将軍ゲラルトの周囲に目に見えるほどの暗黒のオーラが立ち上り、近衛騎士隊長シグルドの手が完全に長剣の柄へと固定される。彼らの目が一斉に、冷徹な暗殺兵器である「弩」のように細められ、テオへと向けられた。
テオは滝のような冷や汗を流しながら、魂の底から植物への忠誠と無実を大真面目に祈り、命がけでその場を平伏して乗り切るしかなかった。
それから数時間後。
生きた心地のしないまま、どうにか本日の庭仕事を終えたテオは、泥のように疲弊した身体を引きずり、使用人部屋へと続く薄暗い渡り廊下を歩いていた。
一刻も早く自室へ戻り、己の命がまだ繋がっていることを確認したかった。だが、その角を曲がろうとした瞬間、影の中から、静かに佇む人影が現れた。
美しい顔に、聖者のような優しい微笑を浮かべた青年。オルブライト家の次男であり、日頃は有能なる文官として国政を支える、宰相補佐ヴィンセントであった。
「おや、テオ。今日も遅くまでご苦労様です。君のおかげで、我が家の庭園はいつも美しいままです。本当に感謝していますよ」
いつもの外面通りの、耳に心地よい穏やかな声であった。テオは安堵しかけたが、ヴィンセントの切れ長の鋭い目が、一瞬だけ冷たく微笑んだのを、新米庭師は見逃さなかった。
ヴィンセントは手にした書類から視線を外さぬまま、淡々と、しかし極めて冷徹な声で言葉を続けた。
「ところで、テオ。庭園の管理において、最も重要な仕事は何だと思いますか? ……そう、間引きです。どれほど美しい花であっても、余計な位置に生えた『芽』は、早いうちに根元から綺麗に摘み取らねばなりません。放っておけば、庭園全体の調和を乱す不条理な存在になりかねませんからね。……君なら、私の言いたい意味が、よく分かりますね?」
(笑顔で俺の恋心の間引きを通告してきた……!! 文官の癖に、大将軍や将軍並みに圧が凄まじすぎる……!!)
テオは喉の奥を鳴らしながら、ただただ「は、はい……重々、承知しております……」と、大真面目な悲惨さに身を震わせるしかなかった。
テオはキリキリと鳴り響く己の胃袋を必死に片手で押さえながら、幽霊のような足取りでとぼとぼと使用人部屋へと帰っていった。
………もう二度と、二階の窓辺を仰ぎ見るような不埒な真似はしない。この屋敷で白薔薇に恋をするということは、国家最高峰の武力と権力によって物理的に圧殺されることを意味するのだと、二十二歳の青年は魂の底から理解した。
* * *
数日後。
それは、よく晴れた昼下がりのことである。オルブライト伯爵邸の高貴な正門が厳かに開かれ、使用人たちの間に一陣の激震が走った。
テオが庭園の隅で生け垣の手入れをしていると、周囲の従僕や侍女たちが色めき立ち、「まさか」「あの方が」と口々に囁き合っているのが聞こえてきた。
なんと、あの稀代のプレイボーイにして、容姿端麗、有能無比と謳われる最高権威───ベルンシュタイン大公閣下が、我がオルブライト家のメリッサ嬢を見初め、堂々と求婚のために来訪されたのだという。
庭園の小道を、大公閣下が静かに歩んでくる。その姿が視界に入った瞬間、テオは思わず息を呑んだ。
(……な、なんてお方だ)
そこにいたのは、麗しの近衛騎士隊長シグルドすらも確実に領駕する、圧倒的な美貌の男であった。
夜を溶かし込んだかのような漆黒の髪と、すべてを見通すように鋭く煌めく黒い瞳。端正極まるその顔は、ただ通り過ぎるだけで誰もが平伏したくなるほどの輝きを放っている。最高級の正装を纏ってはいるが、かつて苛烈な戦場を駆け抜けてきた戦士でもある大公のその完璧な長身の衣服の下には、どれほど強靭で逞しい肉体が隠されているのか、テオの目から見ても容易に想像がついた。まさに、帝国最高峰の美と武を体現したかのような、完璧なる支配者であった。
───だが、これほど隙のない、至高の戦士の登場を前にしても、テオの胸を去来したのは憧れなどでは断じてなかった。
(……いや、待て。いくら逞しい肉体を持っていようが、いくら顔が美しかろうが、関係ない。ここはオルブライト伯爵邸だぞ)
その瞬間、テオの脳裏に、己を死の淵まで追い詰めた『茨』たちの顔が過った。大将軍の国家滅亡級の殺気、将軍の暗黒オーラ、近衛騎士隊長の右腕切断宣告、宰相補佐の笑顔の間引き通告。あの常軌を逸した怪物どもが四人も揃っている巣窟へ、この男は自ら進んで足を踏み入れようとしているのだ。
(なんて……なんて命知らずな御方だ……!!!)
テオの目には、その逞しくも美しいアルシードの姿が、いくら最強の戦士であろうとも、自ら百倍の火力を持つ猟銃の前に躍り出る哀れな獲物にしか映らなかった。どれほど無敵の肉体を誇ろうが、あの『茨』に捕まれば一瞬で肉片にされるのは火を見るより明らかである。
案の定、大公閣下が邸内へと一歩足を踏み入れた刹那、オルブライト邸の奥底から、国家をいくつか滅ぼしかねないレベルの凄絶な殺気が立ち上った。
地鳴りのような足音を響かせる大将軍ガルフォード、目に見えるほどの暗黒オーラを放つ将軍ゲラルト、いつになく冷徹な顔で長剣の柄を握りしめる近衛騎士隊長シグルド、そして聖者の笑みを浮かべたまま大公を合法的に抹殺するための書類を精査していそうな宰相補佐ヴィンセント。
邸内から漏れ出てくる、眉間に冷たい剣を突きつけられるどころではない、弩の一斉掃射をも生ぬるいと感じるほどの弩級の包囲網。これほど逞しく美しい大公閣下とて、この理不尽極まる『茨』の猛攻の前に、今頃は極限の悲惨さに直面し、大真面目な顔で冷や汗を流しているに違いないのだ。
テオは庭園の物陰から邸宅を仰ぎ見ながら、己の胸の前でそっと十字を切った。そして、かつて抱いた甘酸っぱい恋心が恐怖と共に完全に昇天していくのを感じながら、自分以上の理不尽な戦場に身を投じたアルシードに対し、涙ながらに心の中から最大級の同情を捧げるのであった。
「大公閣下……どうか、どうか強く生きてください……!」




