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白薔薇の陣列、茨に和す黒薔薇

 漆黒のとばりが降りる帝都。その静寂を切り裂き、一騎の駿馬が狂乱のごとく街道を疾駆していた。


 手綱を握るアルシードの胸を満たしているのは、未だかつて味わったことのない激しい焦燥である。


 筆頭秘書官ハンスがもたらした報告は、極めて不穏なものであった。帝都の闇市場を牛耳る大物商人のもとで、巨額の金貨が動いたという。いくつもの偽装名義とダミー商会を経由したその破格の資金は、他国の精鋭暗殺集団を国内に引き入れるための「前金」である可能性が極めて高かった。確たる証拠こそない。しかし、これほど徹底した隠蔽工作を成し遂げられるのは、ハインリヒ公爵家をはじめとする、宮廷でもごく一握りの権力者のみ。


 もし、その推測が事実であるならば───狙いはただ一つ。


 政争の道具として「偽装婚約」の最前線へと引きずり出してしまった、あの可憐な白薔薇───メリッサの命に他ならない。


 アルシードの脳裏に過るのは、絹のように滑らかな白銀の髪を揺らし、透き通ったブルーの瞳を輝かせながらはしゃぐお転婆な素顔。目の前に差し出された甘味を、蕩けるような表情で本当に美味しそうに、嬉しそうに頬張っていたあのさ防備で無邪気な笑顔だった。


 あの温かく眩しい輝きを、泥に塗れた政争の犠牲にしてなるものか。



「私の慢心が、取り返しのつかぬ事態を招いたというのか……!」



 己の甘さを呪う悔恨の言葉は、激しい風の音にかき消されてゆく。


 かつては数多の淑女を魅了し、恋を遊戯と割り切っていたはずの己が、今や一人の令嬢の安否に、生きた心地もしないほどの絶望を味わっている。


 胸を締め付ける狂おしいまでの戦慄を、アルシードは「過密な政務による一時の錯覚だ」と、頑なな理性の盾で押し隠そうとした。しかし、刻一刻と迫る恐怖の前に、そのような欺瞞ぎまんは何の役にも立たなかった。


 激しく火花を散らす馬の蹄の音だけが、彼の祈りにも似た悲痛な叫びを夜闇へと運んでいった。


 一刻も早くオルブライト邸へ。メリッサを大公家の総力を以て保護せねばならない。


 ひたすらに馬を駆り、オルブライト伯爵邸へと続く分岐点へと差し掛かったその瞬間、前方の闇から、地響きのような圧倒的なひづめの音が轟いた。


 ただならぬ殺気。帝国の夜天をも揺るがさんばかりの、苛烈なる武の気配が迫る。



「───何奴!」



 アルシードが鋭く愛馬を制した視線の先、月光に照らし出されたのは、あまりにも見覚えのある三つの影であった。


 先頭を走るのは、数多の戦場を文字通り踏み荒らしてきた帝国軍の絶対頂点、大将軍ガルフォード。その背後に寸分の乱れもなく従うのは、国防の要たる将軍ゲラルト。そして、抜き放たれた剣のごとき鋭利な殺気を放つ、近衛騎士隊長シグルド。


 大公邸からの急使を受け、すぐさま飛び出してきた茨たちが、夜風に外套を翻し、漆黒の弾丸となって迫り狂う。


 シグルドは突如として眼前に現れた大公の姿を認めると、強く手綱を引き、整った容貌を引き締めて馬を並べた。



「大公閣下……! 閣下からの急報、確かに受け取りました!」


「シグルド! 直ちにオルブライト邸の警戒を───」



 アルシードの言葉を遮るように、大将軍ガルフォードが、馬上の姿勢を崩さぬまま威厳に満ちた声を響かせた。



「大公閣下、邸にメリッサはおりませぬ。現在はヴィンセントと共に、西の街道より帰路の途上にございます」


「何だと……!」



 アルシードの顔から完全に血の気が引く。


 外出の事実すら把握できぬまま、最精鋭の暗殺集団が潜むやもしれぬ夜闇に、武器すら持たぬヴィンセントと、メリッサの二人が取り残されているという最悪の現実。その過酷な事態を前に、高貴なる大公の思考は一瞬にして凍りついた。



「ヴィンセント一人では、奴らの牙からメリッサ嬢を守りきれるはずがない……! 急がねば!」



 アルシードは即座に馬の首を巡らせ、躊躇いもなく「茨」たちの陣へと飛び込んだ。


 シグルドは、妹を案じて身を焦がす大公の横顔を、複雑な眼差しで見つめる。


 本人は未だ、己の不徳を呪う「責任感」に駆られていると信じ込んでいるようだが、その必死さは、とうに一線の庇護欲を超えていた。剥き出しの執着をその横顔に滲ませるアルシードに対し、シグルドは胸中にくらい重圧を覚えながらも、ただ前方の闇だけを睨み据えた。



「大公閣下、遅れぬよう付いて来てください。───行くぞ!」



 将軍ゲラルトの剛毅なる号令が響き、四騎の駿馬は一つの巨大な嵐となって、西の街道へと転進した。


 警戒と、反目。しかしそれらを遥かに凌駕する「メリッサの守護」という共通の絶対正義のもと、大公と「茨」たちは、奇妙にして強固な鉄壁の連帯を以て闇夜を疾駆する。


 国家最高峰の武力を有する男たちが、極めて深刻に、命がけで一人の少女のもとへと突き進むその姿は、周囲の夜気を呼吸すら出来ぬほどに圧迫していた。


 やがて、前方の街道のただ中に、不自然に停車したオルブライト家の馬車の影が浮かび上がる。


 周囲に漂っているのは、濃厚な血の臭気。


 シグルドが鋭く馬を寄せ、アルシードが落馬をも辞さぬ勢いで馬上から地へと飛び降りる。


 男たちは各自の武器を構え、最悪の惨劇を覚悟しながら、暴漢どものしかばねが転がる戦場へと一斉に突入した。


 しかし、彼らがそこで目にしたのは───。



  *  *  *



 冷ややかな月光が降り注ぐ街道に、重苦しい静寂が満ちていた。


 停車した馬車の周囲に転がる、五体の暴漢たちの屍。そこから立ち上る濃厚な血の臭気の中に、オルブライト家が誇る「茨」とアルシードは同時に突入した。


 最悪の惨劇を覚悟し、一斉に得物を構えた男たちの視界に飛び込んできたのは───あまりにも予想を覆す、凄絶にして静謐せいひつな光景であった。


 返り血を浴び、左の美しい袖口を赤く染めながらも、何事もなかったかのように静かに自身の衣服の乱れを整えている一人の男。


 それは、宮廷の文官であり、戦う術など持たぬはずの、宰修補佐ヴィンセントに他ならなかった。



「ヴィンセント!」



 その姿を認めた瞬間、近衛騎士隊長シグルドの端正な顔が血相を変えた。


 シグルドは迷わず弟の元へと駆け寄り、すぐさまその傷口を縛るべく、迅速な手際で止血の動作へと移る。腕から鮮血を流す弟の姿を前に、兄としての本能が彼を突き動かしていた。


 迫り来る兄の切迫した剣幕に、衣服を整えていたヴィンセントの視線が揺れる。


 瞳の奥に微かな安堵を滲ませながらも、ヴィンセントはどこか自嘲気味な笑みをその唇に浮かべてみせた。



「……随分と遅い到着でしたね、兄上。肝が冷えましたよ」



 極限の死闘を終えた直後であるというのに、普段と何ら変わらない、いつもの嫌味な物言い。


 その言葉に、シグルドは胸の内で安堵を覚えつつも、こわばった表情を崩さぬまま、手元に力を込めた。



「そんな嫌味が言えるなら大丈夫だな」



 シグルドは容赦なく、ヴィンセントの負傷した腕を布で容赦なく強く縛り上げる。


 情け容赦のない強固な止血の衝撃に、さしものヴィンセントも「……っ」と短く息を詰め、その端正な眉を痛みに激しくしかめた。



「……くっ」


「……ふっ」



 激痛が通り過ぎた直後、二人の男は短い吐息を漏らし、互いの無事を確認し合うように、闇夜の中で静かに笑みを交わし合った。そこには、血を分けた兄弟にしか分かり得ぬ、確かな絆が存在していた。


 ───だが、その静かな光景を、言葉を失って見つめる者がいた。


 アルシードは大公としての品格を保つことすら忘れ、ただ呆然と佇んでいた。


 その視線が、ヴィンセントの足元に転がる五体の凄惨な骸へと注がれる。


 大公家の情報網を以てしても発信源を突き止められぬほどの巨額で動いた、他国の最精鋭たる暗殺集団。その怪物たちを、よもや、剣も握らぬはずの文官が、たった単身で退けたというのか。


 アルシードの背筋に、未だかつてない本物の戦慄がはしった。


 政務の場における冷徹で油断ならぬ男───それだけでも十分に恐るべき存在だと思っていた。しかし、あの洗練された佇まいの裏に、一流の騎士すら凌駕する圧倒的な武までをも秘めていたとは。


 足元に転がる無言の屍が、男の底知れぬ脅威を冷酷に証明している。自身の想像を遥かに超越した宰相補佐という男の全貌に、大公の思考は完全に凍りついていた。


 シグルドによる止血が進む中、硬直しているアルシードの視線に、ふとヴィンセントが気づく。


 二人の視線が、闇の中で真っ直ぐに交錯した。


 大公の隠せぬ動揺をその瞳に映しながら、左腕を血に染めた文官は───何事もなかったかのように、実に涼しげな笑みを、その端正な顔に浮かべて見せたのである。


 その歪なほどに美しい微笑は、周囲の夜気をさらに張り詰めさせた。


 しかし、街道を満たす濃厚な血の臭気と緊迫感は、完全に霧散したわけではない。


 大将軍ガルフォードと将軍ゲラルトの二人の巨頭は、苛烈な殺気を身に纏ったまま、周囲に転がる暴漢どもの屍を鋭く睨みつけ、大股で馬車へと近づいた。



「メイは無事なのか!」


「メイは中か!」



 二人が今にも馬車の扉に手をかけようとしたその刹那、ヴィンセントがその手前に、静かに、されど確固たる壁のごとく立ち塞がった。




「───メリッサは中でよく眠っておりますので、起こさぬようお静かに。不埒な羽虫どもに、髪の毛一本すら傷つけさせてはおりません。ご安心を」



 低く、しかし凛としたその響きに、その場にいた男たちの動きが止まる。


 返り血に染まった凄惨極まる戦場の有り様を、あの可憐な薔薇に一瞥たりとも見せたくはない。その無言の、しかし絶対的な家族の配慮を共有したガルフォード、ゲラルト、シグルドの三人は、同時に張り詰めていた巨躯から大きな安堵の息を吐き出した。


 将軍ゲラルトが、鋭い視線を少しだけ和らげ、負傷した次男の肩に目をやる。



「───よくやったな、ヴィンセント。見事な立ち回りだ」


「ふはは! 我ら親子が直々に鍛え上げてやった甲斐があったというもの。されど、たかだか五名程度の羽虫を相手にその身に傷を負うとは、まだまだ未熟よ」



 大将軍ガルフォードも、威厳に満ちた声を轟かせながら、おおらかに笑ってヴィンセントの背を軽く叩いた。


 シグルドの手によって強く縛り上げられたばかりの腕へ、さらに祖父の豪快な掌撃しょうげきが加わり、さしもの知性派たる次男もその端正な顔を再びしかめる。



「邸に戻らば、根性から鍛え直してやるわ!」


「……ふっ、手厳しいですね、祖父上」



 激痛に耐えながらも、ヴィンセントはどこか苦笑交じりの声音で応じた。


 その完璧なる家族の輪から一歩離れた場所で、大公アルシードは、ただ己の身体の内側から湧き上がる異様な異変に直面していた。


 メリッサの無事。彼女の髪の毛一本すら傷ついていないという絶対の事実。それを耳にした瞬間、アルシードの身体の芯が、目に見えぬ力で激しく揺さぶられるかのように震え始めた。


 数多の凄惨な戦場で、幾度も死線を潜り抜けてきたと自負する大公であったが、未だかつて、このような内側からの恐ろしいまでの震えを経験したことはない。


 それどころか、額やうなじからは、衣服を濡らすほどの大量の汗がどっと吹き出していた。見つめるその両手は、今や露骨にぶるぶると震えて止まらない。



(……なん、だ……この震えは……。なぜ、私はこれほどまでに───)



 大公は胸中で、必死になってその不可解な戦慄の正体から目を背け、自己欺瞞の蓋を力ずくで閉めようと試みた。


 この激しい動揺の理由など、彼には到底理解できるはずもなかった。


 ───いや、理解したくなどなかった。ただ、夜闇の冷気の中で一騎、馬を全力で疾駆させ続けたのだ。手綱をあまりにも強く、必死に握り締め続けていたからこそ、肉体が限界を迎えて震えているに違いない。この滝のように流れる汗も、すべては疾駆による身体の熱気のせいであった。


 己を襲う激しい生理現象のすべてを「手綱のせい」と言い訳し、大真面目にその場に立ち尽くすアルシード。しかし、その横顔に滲む激しい困惑と動揺は、漆黒の闇のなかでも隠しきれぬほどに痛々しかった。


 ───カタ、と。

 不自然に停車していた馬車の中から、微かな物音と、小さく衣擦れの音が響いた。メリッサが目を覚ました、確かな気配。


 その瞬間、街道を支配していた男たちの空気が、一言の打合せもなく一変した。


 返り血を浴び、左袖を赤く染めたヴィンセントは、その凄惨な姿を愛する妹に一瞥たりとも見せぬよう、音もなく御者台へと跳ね上がった。その刹那、未だ激しく身体を震わせ、滝のような汗を流しているアルシードを、次男は冷徹な眼差しで横目に見やった。


 先ほどまで、己の肉体の震えを「手綱を握り締め続けていたせいだ」と必死に言い聞かせていたアルシード。しかし、冷徹な文官の目は欺けなかった。


 メリッサの名誉のために皇太子すら圧倒し、身を挺して退けた男だ。その誠実さと、だからこそ妹の心を奪いかねない脅威であることは、認めざるを得なかった。だが、まさかこれほどとは。



(───大公閣下。あなたというお方は、よもやこれほどまでに、メイのことを案じておられたのか……?)



 それは、冷徹な宰修補佐であるヴィンセントにとっても、予測を遥かに超えた大公の姿であった。


 本人は「義務」や「不徳の悔恨」という理性の盾で必死に誤魔化しているようだが、その無様なほどの動揺は、とうに一線の庇護欲を超えている。ただの偽装婚約の相手に対して、これほどまでに剥き出しの恐怖に身を焼き尽くされているその姿は、あまりにも「本気」が過ぎる。



(まったく……。これでは本当に、手強すぎるな……)



 胸中で静かに毒突き、その底知れぬ動揺を完璧な文官の仮面の下へと隠したヴィンセントは、死体となった御者に代わって手綱を握った。


 それと同時に、シグルドは即座に自身の外套の血汚れを払い、何事もなかったかのような穏やかな微笑を湛えて馬車の中へと滑り込む。



「……あら? シグルドお兄様……?」



 眠たげに美しい目を擦るメリッサが、不意に現れた兄の姿に驚きの声を漏らす。



「ああ、メイ。驚かせたね。ヴィンセントの元へ、急を告げる宮廷からの要件が入り、急ぎここまで知らせに来たんだ。祖父上と父上も合流したよ。ヴィンセントは先に俺の馬で、その急用を片付けに向かったんだ」



 騎士としての即興とは思えぬほど、淀みないシグルドの欺瞞。その言葉に、メリッサは純粋に納得したように小さく頷いた。



「まあ……ヴィンセントお兄様、こんな夜半に大変ね……お疲れなのに。でも、お祖父様とお父様まで来てくださったなんて嬉しいわ」



 何も知らないメリッサは、シグルドに無邪気に笑顔を向けると、誇らしげに胸を張った。



「これなら夜道も安心ね」



 ほっと胸を撫で下ろしたようなメリッサの呼びかけに応じるように、馬車の両側に騎乗したガルフォードとゲラルトが、左右の窓からそれぞれ厳格な顔を覗かせた。


 二人の巨頭は、愛しいメリッサへ向けては、目に入れても痛くないと言わんばかりの、いつもの締まりのない優しい笑みを浮かべている。───が、その慈愛に満ちた表情の裏で、彼らの神経は限界まで尖り、眼光の奥では未だ闇に潜むやもしれぬ外敵の気配を、極限まで警戒し続けている。



「メイ、よく眠っていたな。もう少し眠っていて良いのだよ」


「うむ、そうだな。メイ、我らがついているからな。何一つ案ずることはないぞ」



 父と祖父のいつも通りの温厚な声に、メリッサは「はい、お祖父様、お父様」と愛らしく微笑み、再びそっとシートへと身を預けた。


 その完璧なる家族の欺瞞の輪の外側で、アルシードは静かに一歩を踏み出した。


 シグルドが咄嗟についた嘘により、そこには主を失った近衛騎士隊長の愛馬が残されている。月光を浴びて淡く輝く、気高き白馬。アルシードは音もなくその傍らへと近づくと、真っ白な美しいたてがみを優しく撫でてやった。己を支配する激しい震えを宥め、呼吸を整えるかのような、穏やかな手つきであった。



「……お前の主人が急用でな。私と帰るか」



 メリッサに己の存在を気付かれぬよう、低く掠れた声音で白馬に囁きかけ、大公はその手綱を静かに引き受けた。家族ではない。されど、あの薔薇にこの凄惨な現実を隠し通すという一点において、アルシードは茨たちと呼吸を合わせ、奇妙な連鎖へとその身を投じたのである。


 馬車の扉から、シグルドがそっと外の様子を窺うように顔を出した。大公が自身の空馬の手綱を引いてくれているのを目にし、近衛騎士隊長は無言のまま、ただ一度だけ、深く頷いて謝意を示した。


 メリッサの姿そのものは見えなかった。だが、馬車の壁を隔てて聞こえてきた、あの鈴を転がすような愛おしい声。夜道も安心だと言って無邪気に胸を張る、その愛らしい響き。


 それを耳にした瞬間、アルシードの肉体にまとわりついていた不可解な戦慄と、滝のように流れていた冷や汗が、嘘のように引いていく感覚を覚えた。



(いや、さっきまで全然安心じゃなかったんだがな……)



 胸の中でそっと、あまりにものんきな婚約者にそう突っ込みを入れ、アルシードは夜の闇の中でふっと柔らかな苦笑を漏らした。


 心底からの圧倒的な安堵のなか、大公アルシードは気高き白馬を連れたまま、自身も静かに愛馬へと跨った。


 鉄壁の護衛陣形を敷くオルブライト家の男たちの背を追い、馬車の後方を静かに守護するように、大公は漆黒の街道を邸へと向けて進み始めた。


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